新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

コミックマーケット92のご案内

 来る8月11日(金)より東京ビッグサイトで開催されます夏コミ、コミックマーケット92にて頒布される同人誌にワタクシ笹松が書いた原稿が掲載されているものがございます。どちらも当日ブースに笹松本人は居りませんが、ご興味のあるご奇特な方はどうぞよろしくお願いします。

 

 まず一つ目。

・サークル名:スマサー

・日付場所:1日目(8月11日)金曜日 東7ホール せ12b

・掲載誌名:季刊スマサー Vol.14

・以下内容:

 スマートフォンに関していれば何でもいいよ、という編集長のひと言により、クルマでスマホを充電しよう!という記事を書きました。シガーソケットに100円ショップの充電器を入れるとスマホホルダーまでケーブルが這っちゃうから、ヒューズ電源を使ってオートバックスで売ってるUSB電源ポートを取り付けちゃおう!という工作指南が掲載されています。カーナビのついていないクルマも充電ポートを取り付けるだけでスマートに!シガーソケットから伸びるケーブルが邪魔だなあと思っている方にどうぞ。

 

 

 次は評論系同人誌です。

・サークル名:わがはじ!

・日付場所:3日目(8月13日)日曜日 東3ホール エ32a

・掲載誌名:’00/25 Vol.7 これからの「性器」の話をしよう~明日を生き延びるための下ネタ~

・以下内容:

 弊ブログ「新スクの淵から」の出張版ということで、理想のセックスってどんなだったっけ、膣内射精ってなんだったっけ、という原点に立ち返った記事を書きました。同時掲載の皆様方が指でつまめそうなぐらい濃ゆいので、私の文章が埋もれていないか若干不安になりつつありますが、もう本はできあがっているのでまな板の上のコイキング。詳細は下記にてご確認くださいませ。

www.wagahaji.com

 

 なお、冬のコミックマーケット93については直接参加を予定しております。ジャンルは艦これ、と申し上げて良いものかどうか、内容は阿武隈コスプレイヤーのR18SSということで、これまで書いたことのないジャンルを指定されてなかなかに困惑しつつ書いたり消したり……。今日も頭を抱えながらああでもないこうでもないと一進一退の脳内攻防戦をしておりますのでこちらも併せてお楽しみに。

 

 例年通りの酷暑が予想されますので、参加される読者諸賢におかれましては、どうぞお体にお気をつけくださいますようお願いします。

 

 それでは、有明でお会いしましょう。

ジオラマをつくる話

 先日は姫路運転会という、Nゲージ鉄道模型を持って集まる身内向けの集会に参加してきました。姫路を含む西日本を中心としたエリアでやりましょう、ということで、では姫新線のとある駅をモデルにモジュールを作ろうと思いました。とは言え初めから何か作ろうとしていたわけではなく、能登屋が須磨-塩屋駅間のジオラマ・モジュールを作るといい、他方あくあちゃんが「古墳」を作ると言い出したので「オイオイオイオイ気合入ってんな、じゃあなんか作るか」と思って、ひとまず岡山のキハ40/120あたりを置いて眺められそうなジオラマを作ることにしました。

 

 せっかくつくったジオラマも展示(という名の放置)しているとホコリが積もってしまいますので、フタができるような構造にしましょう。というわけで、入手性の良いダイソーのディスプレイケースを用意しました。後は手元にあったトミックスのプラットホーム、建築模型などに使うスチレンボードが適量、レール、プラ板、などなど、なるべく手元にあるもので安価に済ませています。

f:id:sasamatsu:20170627203157j:plain

 

 

 地面の表現というのがなかなか難しいのですが、安直に紙粘土を使うことにしました。とは言え、ホームの高さまで紙粘土を盛るのは大変ですから、スチレンボードでかさ上げをします。

f:id:sasamatsu:20170628152229j:plain

 スチレンボードをスポンジケーキに見立てて、クリームを塗るように紙粘土を……

f:id:sasamatsu:20170628183149j:plain

f:id:sasamatsu:20170628183202j:plain

 荒れ地になっちゃいました。中央防波堤のジオラマだったらこれでも良いかもしれませんが、駅前ロータリーがこんなボコボコだとジムニーパジェロしか入れなくなっていまいますので均しましょう。とはいっても紙粘土の扱いなんて6歳ぐらいから進歩がありませんので、そこは無知の知を自覚したところでインターネットに頼りましょう。すると、完全に固まる前にきめ細かい濡れた布で撫でると滑らかになるようなので、雑巾を軽く絞って撫でると

f:id:sasamatsu:20170629000759j:plain

 なめらかになりました。何やら怪しいものが植えてありますが

f:id:sasamatsu:20170726005758j:plain

 外径3ミリの真鍮パイプとLEDを使って街灯を作ったようです。それと、プラ板

f:id:sasamatsu:20170628170814j:plain

f:id:sasamatsu:20170628182732j:plain

 それっぽく駅舎を作りました。0.5 mmのプラ板は光が透けるので、内側は銀色で塗装することに。

f:id:sasamatsu:20170701010651j:plain

 明るいところで見られると恥ずかしいから電気を消してください。……なあに目が慣れてくると電気を消しても見えちゃうんだなあ。げっへっへ。

f:id:sasamatsu:20170701012436j:plain

 紙粘土の大地を水性グレイペイントで塗装してアスファルトっぽくするとこんな感じになります。駅舎が浮いていて光がチラチラしているのがアレですから地面をちょっと掘り込んでおきましょう。あとで。ついでにプラ板ワンマン運転用のバックミラーを立てておきましょう。適当なオレンジ色で塗っておけばそれっぽい。

f:id:sasamatsu:20170701035139j:plain

 型の古いクラウンしかなかったのですが、とりあえず黒く塗って、緑のナンバーをつければタクシーと言い張れるでしょう。実際には5ナンバーのコンフォートですが、3ナンバーのクラウンでもまあ……ジオラマの脇役だし……

f:id:sasamatsu:20170701164509j:plain

 せっかくなので別の車両にも室内灯を入れておきましょう。日本全国だいたいどこでも置くだけで田舎っぽくなるキハ47系の2両編成にLEDテープでお安く……

f:id:sasamatsu:20170703020048j:plainf:id:sasamatsu:20170703030635j:plain

f:id:sasamatsu:20170703032305j:plain

 ホームに付属している「柵」が少し時代を感じすぎるので、建築模型用の透明プラ板に印刷されたフェンスを使いました。スケールが200:1とのことですが、まあ違和感はないでしょう。

f:id:sasamatsu:20170707041022j:plain

 

 本来ならプラ板で公衆トイレを作ったり、植え込みやキュービクルの設置も必要ですが、時間と材料調達の面からタイムアップ。姫路に持ち込みました。

f:id:sasamatsu:20170708144634j:plain

f:id:sasamatsu:20170708144736j:plain

 後ろにある大きなのが能登屋作の「須磨~塩屋間」のモジュール。当日私が作ったほうのモジュールは「阿字ヶ浦駅っぽい」とのことで、ひたちなか海浜鉄道の車両や茨城交通のバスと一緒に記念撮影。当日は皆様ありがとうございました。

 

 遠目に見ると良い感じです。枕元に置けるサイズのジオラマを作ってみてはいかがでしょうか。

f:id:sasamatsu:20170726011720j:plain

金策と夜行列車

 夜行列車。今、毎日走るのは東京-高松間のサンライズ瀬戸号、および東京-出雲市間のサンライズ出雲号だけとなってしまった。かつては日本全国西へ東へ走っていた夜行列車は、より輸送量が小さく、より行先を多く設定できる夜行バスに取って代わられた。とはいえ夜行移動の需要が消えたわけではなく、これからも夜行バスは繁盛するだろうし、夜行独特の雰囲気というものはあり続けるのだろう。

 

 少し古めの小説や自伝等で「夜行列車で金策に走る」というシーンが良くある。どうしても公的な融資が受けられず、伝手を頼って西へ東へ頭を下げに直接金融をお願いするという生々しい昭和の時代のひとコマである。とはいえ平成の世になっても同じような真似をする必要というのは場合によってはありうる。ある日とある上り東京行きサンライズ瀬戸号に"金策乗車"していたひとりの青年が居た。名は皆さまご存知笹松という輩だ。なんでも「日本学生支援機構」とやらに頭を下げるために夜行列車を用いて郷里から千葉の大学まで急行しているのだ。当然、これにはワケがある。

 

 時は2011年、大地震原子力発電所がポムっと水蒸気爆発を起こし、電力が不足してきたためか、時の千葉大学は所定であれば休日である土曜日にも授業を設定し、夏休みを前倒して延長することにした。英断である。日々の休日は減るけれどもひとまず夏休みの延長分で振り替えられる。従って、平年通りであれば8月10日頃からとなる夏休みが1ヶ月延長となり、7月中旬からとなった。これ幸いと私は7月中旬より郷里の自動車教習所で普通免許を取る手続きをし、20日ほど帰省することにした。帰省すれば食事は無料だしガスも電気もタダな上にうまいうどんは食べ放題、ということで香川に帰ろうとした。

 

 ところがだ、当初の計画通り7月下旬に奨学金説明会が設定され、出席が義務づけられてしまった。400万円借りたければ7月末に大学に出頭せよ、さもなくば貸してやらんと申す血も涙もない日本学生支援機構という組織がそこにはあった。

 

 しかしながら教習を後ろにズラすわけにはいかなかった。この時点ですでに他大学の夏休みでもある8月下旬の教習は予約が困難となっており、奨学金説明会の当日だけ1日休みにしてまた香川に戻ってくることとなった。

 

 ある日の教習終了後、実家に帰るや否や荷造りであるが、その目的は奨学金説明会に出席することであるから荷物は抱えるほどのサイズにもならず、おおかた夜行列車に乗るとは思えぬ少ない荷物で坂出駅のホームに立った。時刻通りにクリーム色の大きな電車は特急|東京行の表示も誇らしげにしずしずと入線。個室寝台……ではなく、フェリーの雑魚寝を思わせるカーペット敷きのノビノビ座席が本日のお宿である。これからおおよそ400万円の金策に向かう金融困窮者ひとりと、ほか大多数の旅行者を乗せた特別急行は瀬戸大橋を渡っていった。

 

 どうせ金策に走るなら血も涙もない機構相手ではなく資産家の美人を相手にしたかった。

あなたが私にくれたもの(2)

 欲しいものは思い出とともに。なお、誕生日プレゼントは誕生日前後半年間受け付けておりますのでどしどしお寄せください(重ね重ね)。

www.amazon.co.jp

 

2件目:あくあちゃんから

f:id:sasamatsu:20170714125702j:plain

なるさわ景「はげませっ!エッチアガール」

荒岸来歩「ヌキ挿し自由のメイド穴」

熊之股鍵次魔王城でおやすみの2巻

・るーすぼーい「無能なナナ」の2巻

 まんがをたくさんお送りいただきました。ありがとうございます。やったぜ。……ん?2巻?1巻がまだリストに残ってるな???????やられたァ!くぅぅぅ!!!!

 

「え?だって欲しいものリストに複数巻あったら最後のやつ押すやろ」とのこと。

 

3件目:熊さんから

f:id:sasamatsu:20170715123104j:plain

f:id:sasamatsu:20170715123219j:plain

・ハタヤのコードリール

 やったぜ。これでコードレスクリーナーを持っていなくても駐車場のクルマに掃除機をかけられるぜ。屋外で電動ドリルも使えるぜ。ウッドデッキも組めちゃうぜ。なにせ日曜どころか半年毎大工だとバッテリ仕様の工具は電池がダメになっちゃうからね。これはありがたいです。大事に使わせていただこう。体育館に持っていって女子校生の汗の匂いを吸い込みながら球技用のタイマーの電源を確保することも……え?床からコンセントが飛び出てくるからいらない?あっそう……。

 

4件目:さんどる先生から

f:id:sasamatsu:20170716113456j:plain

・ペペローション

キムワイプ

 そのキムワイプでナニを拭き取らせようとするのか。美人とローションプレイした事後に拭きなされということか。いやダメだろ。ティッシュ取ってあげてありがと♡とか言ったら実はキムワイプでしたってあかんやつでしょ。殴られるで。事後に一緒にお風呂入ってイチャイチャラブラブタイムのはずがお説教されつつなんとか機嫌を直して頂く接待になってしまう……。避けたい事象ですね。

 

5件目:能登屋から

f:id:sasamatsu:20170716113618j:plain

吉本浩二ブラックジャック創作秘話」

ヤマキめんつゆ 1800 cc

 わあありがとうございま……でけえよ!まさか自家用車(1400 cc)の排気量よりデカいめんつゆを送りつけてくるとは思わなかった。この能登屋という人物は先ほど名前が出てきた熊さんや、いつもお世話になっている円さんには素麺「揖保乃糸」をキロ単位で送りつけるという悪辣なお兄さんなのですが、私のところには「素麺は自分で買ってね」とめんつゆを送ってきてくれました。いつから日本は物々交換ができるようになったんだろう……めんつゆどうしよう……開封したら冷蔵庫に入れないと痛むし……。

 

6件目:大枝氏から

f:id:sasamatsu:20170718122631j:plain

ふみふみこ「qtμt」1巻

 受け取りの負担を軽減しようという意図でポスト投函となるまんが1冊を頂戴しました。意図通りポストに投函されていたためクロネコのお兄さんに怪訝な顔をされずに済みました(すでに5件も怪しい宛先の荷物を受け取っているためておくれなのはナイショだ)。スケベシーンはあるけどたいっへんに"""業"""の深い作品だと聞いております。って言うか虚淵おめー辛いですってオビでは言っておいて笑顔なんだろ知ってるよ俺は詳しいんだ。

 

 

 というわけで6名もの皆様からステキな誕生日プレゼントを頂戴する運びとなりました。こんな嬉しい誕生日はいつぶりだろうなあ。去年はあんなことがあってweb上から姿を消して潜水艦のように息を潜めて生活していたし、その前は会社の研修施設からようようやっと抜け出した直後でクルマもなく彼女もおらず*1バタバタしていてなかなか悲惨であった。

 

 今年はたくさんの友人からたくさんのプレゼントをもらえた良い誕生日であったので、来年はもっと良くなるであろうと期待している。

 

 

 美人の彼女が焼いてくれた手作りの誕生日ケーキでお祝いされたい。

*1:今も居ないだろうという悲しいツッコミはやめよう

あなたが私にくれたもの(1)

 オレンジ色の……なんだっけ。これ以上踏み込んで記述すると日本音楽著作権協会にお布施をせねばならなくなるのでやめておこう。ジッタリン・ジンの「プレゼント」で検索検索ゥ。というわけで今日はプレゼントのお話。先日の誕生日に合わせて皆様から素敵な素敵な贈り物が届きましたのでここに記録がてらまとめておこうと思います。なお、誕生日プレゼントは誕生日前後半年間受け付けておりますのでどしどしお寄せください。

www.amazon.co.jp

 

1件目:いるかむちゃんから

f:id:sasamatsu:20170713141723j:plain

講談社現代新書「京都のおねだん」(ほしいものリストの品物)

・ゆずリキュール「梅乃宿 ゆず」(梅乃宿酒造)

TDK 婦人体温計

 以上の3点をお送りいただいた。京都のおねだんはちょっと読んでみたかったので大変ありがたい。ゆずリキュールは奈良の梅乃宿酒造の品でたいへん美味であった。そして婦人体温計である。婦人体温計……!?ナンデ!?普段から朝の挨拶でお排卵日とか幼なじみ彼女と排卵日中出しラブHとか安全日に思い切り膣内射精したいとか言ってるから*1かな????

 

 とはいえせっかく頂いた貴重な資料である。今後の人生で基礎体温を測って記録するシーンの描写をするときに婦人体温計の作画にも使える。スマートフォンにデータ転送できるということで、NFCでも搭載してるんかなあ、と思い好奇心から開封。測定完了時の「ピピピ」音を出すのと同じ圧電サウンダを用いてスマートフォンのマイクへなんと音声データで通信するというものだった。あまりのローテクさに驚いたが、転送すべきデータは小数点を抜けば4桁の数字だけであるから十分なのだろう。フリック入力で打ち込んでも大した手間ではないが、手打ちはミスるのだ。2桁目と3桁目を間違えると「36.54℃」正当のところ「35.64℃」と入力されてしまう。入力する指がスリップしてそもそも違う数値が入ることすらあり得る。

 

 何しろ基礎体温を測定するのは寝起きなのだ。寝起きに寝ぼけ眼でその上頭も寝ぼけているからミスしかしねえ環境下だ。然して基礎体温というのは安全日/危険日の管理に直結し、場合によっては人生や財産に関わる大変な問題である。だからこそ婦人体温計の開発者やアプリ開発者は指のスリップ・数値の読み間違いを防ぐべく、99%のスマートフォンに搭載されているマイクというデバイスを用いてデジタルでのデータ入力を廉価に実現したのだと思うと目頭が熱くなってくる。その開発者諸氏に敬意を表し

f:id:sasamatsu:20170719120821j:plain

 ルナルナをインストールした。

*1:自業自得といいます

ささくれ

 ささくれ、というと爪のところの皮膚が剥けてくるさまよりも木材が細く持ち上がってくるさまを思い浮かべてしまうが皆様いかがお過ごしだろうか。さかむけ、とか、さかもげ、と言ったほうがそれを指す気がしてくる。地域性の問題か、私の言語ライブラリに何かしらのバイアスがかかっているのか。別にきょうはさかもげの話をしたいわけではなく、デフォルメの話をしようと思う。

 

 デフォルメとは、対象を変形させて表現するというのがもともとの意味である。例えて言えばプラレール。現実の鉄道車両の長さ方向を極端に短くし、台車構造を廃して床板に車輪を2つ取り付け、フランジを廃し、パンタグラフは真上から見たように屋根に貼り付き……と、元々の車種が何であったかという情報を見事失わずして幼児向け玩具になっている。少々精密の方向に歩を進めてNゲージ鉄道模型ともなると、プラレールに比して精密にはなるが、それでも前面窓ワイパーは可動しないし、行き先表示もレールに乗った状態でグルグル動くかというと無理だから、やはり割り切ってデフォルメをする必要がある。

 

 では冒頭ででてきたささくれとデフォルメの話であるが、これは時間が限られた場合の話である。空間と言ってもいい。紙幅の場合もあろう。創作の話をする。現実でささくれを剥くことに特段意味はないことが多いが、ドラマ、演劇、漫画、小説、その他あらゆる創作物中において「ささくれを剥く」ことが何らかの文脈を有しない場合にはたしてささくれを剥く描写をするだろうか。たとえモデルになる登場人物が居たとして、その人物がささくれを剥いたとしても記述はオミットされるであろう。

 

 しかしながら文脈があれば良いわけである。例えばささくれを剥きすぎる人物が居たとして、その彼女が血までにじみ出たささくれ跡地を痛々しいと指摘し、癖なのだと言い訳をされると、むう、と不機嫌そうに指フェラチオを始めるシーンがあればそれは文脈上必要であろうから、渾身の表現力を持ってささくれを剥こうではないか。そのままオイオイと嗜めたところでえへへぇと指を離してくれたものの彼女の唾液でびちょびちょの指をそのまま口に運びたくなってきたらそう表現してもよかろう。何も普段から生々しくべろちゅーをキメている間柄でもいちど自らを離れた体液を味わわれるのはこっ恥ずかしいことこの上ない。えっちょっまってと言うのが間に合わずに唾液まみれの指を美味しそうに味わえばしてやったりだろう。うーん、デリシャスとでも言わせておけば濡れ場の導入としては及第点だろう。ばーかとか言いながらべろちゅーおっぱじめればあとは流れでお願いします。

 

 飲みながらセックスするという文脈が存在する麦茶を作りたい。

むぎ茶

 今日はむぎ茶の話をしようと思う。むぎ茶というよりは「冷蔵庫に常備されている茶系飲料」の広い話になるが、我が家においてはそれがむぎ茶であったからに他ならない。むぎ茶が抱える諸問題とそれぞれの解決方法を見出し、本質を探ることとする。

 

・飲料とコスト

 飲料とは即ち水分補給のための飲み物を指す。自宅にコーヒーメーカーがある場合は多けれど、給茶機があるというのは少ないように思われる。ここで既に私の偏見が入っている。給茶機が置いてある家庭は実は多数あり、私がこれまでの人生で招かれていないだけで、常にホットな茶系飲料がワンボタンで供給されるという家庭はあるかもしれないのだ。可能性を潰すような真似をするところであった。あぶない。閑話休題。したがって水分補給が出来れば一時期の荒んでいた私のように、コップに粗塩をひとつまみ入れたのちに水道水を注いで飲んでいても差し支えはあるまい。ミネラル分と水分が補給できる最低限度の文化的な飲料であろう。当然毎回粗塩をつまんでいては高血圧までのラストワンマイルをやすやすと走破し医療費増大を招くから大半は水道水をそのまま飲むこととなる。ここで重要となるのはその飲料に係るトータルコストの考え方である。水道水であれば飲料用とする量あたりの単価などタダ同然、粗塩もタダ同然、コップは寝る前に洗うだけで洗浄する手間もあってないようなもの、つまり水道水(ときどきwith粗塩)はほぼほぼコストがゼロとみなせる飲料である。逆にコストの高い飲料となると代表例はビール等の酒類であろう。まず入手するのに金銭的対価が必要だ。その上なんと酒税がかかる。缶ビールだったら買いに行って飲んで洗って潰してゴミ出しまでせねばならない。たいへんな高コスト飲料だ。

 では、むぎ茶の場合はどうだろうか。大きく分けて2つの入手方法がある。家で作るかペットボトル入りむぎ茶を買ってくるかだ。

 

・むぎ茶のコスト

 買ってくる場合は簡単である。ペットボトルの入手単価が即ちむぎ茶の単価となる。嫌儲スレッドなどでは「お茶で儲けやがって」などと言われるように家庭で作ればタダ同然のお茶ではあるが、衛生的にボトル詰めして物流に載せるとお金がかかる。

 ところが、家で作る場合のコストというのは定量化しづらい。何故ならば、家によってむぎ茶の作り方が違うからだ。貧困な私の頭で考えても、

(1)専用のボトルを用意し、時折漂白剤に漬けるレベルで洗浄する。むぎ茶は当然煮出しであるからヤカンで沸騰させた湯に茶葉を入れる。粗熱を取るために水道水を少し出しっぱなしにして冷却し、専用のボトルに詰め、冷蔵庫で保管する。ヤカンも当然洗剤等で洗浄する。

 

(2)専用のボトルに水道水を注ぎ、麦茶パックを入れ、そのまま冷蔵庫で水出しする。量が減ったらそのまま水道水を継ぎ足す。色が薄くなったら麦茶パックを追加する。ヤバそうだなと思ったら専用のボトルは水洗いする。茶渋がひどくなったら洗剤等で洗浄する。なお、当然前回洗浄日等の記録はしていないものとする。

 

 上と下で(1)から(2)くらいまでの違いはありそうだとわかる。ここで問題になるのは複数人でこのむぎ茶を飲用する場合である。極端な話をすると、(2)で作られたむぎ茶を許容できる人間と、そうではない人間が一緒に暮らす場合に問題が発生する。冷蔵庫のスペースというリソースは有限であるから製法の違うむぎ茶を並行製造するわけにはいかないであろうし、そうなると製造コストの高い手法でないと許せない人間がむぎ茶を作るか、あるいは買ってくることになる。その場合に相手方とむぎ茶の製法や購入についてコンセンサスが取れていれば問題は解決するが、この話し合いが決裂した場合は片方にストレスが発生し続ける。許容できないむぎ茶を飲むストレスか、あるいは一方的に製造・購入コストを負担し続けるストレスである。コンセンサスが取れる、というのは、劣悪ながら低コストなむぎ茶の条件(この場合は(2)である)を許容できる側が、高コストなむぎ茶の製造・購入にOKを出し、協力的に応じることを指す。

 コンセンサスを取るのは大変である。まず飲む量には個人差がある。この差を均等に受益者負担とするのはなかなか難しい話である。なぜならばむぎ茶のボトルにはガソリンスタンドのようにメーターがついていないからである。したがって多くの場合は「2本のボトルにて貯蔵し、1本が空になった時点でそれを現認した人間が作る」などのルールを制定することが考えられる。しかしながらこれは「空になった」状態の定義が難しいために争いの火種となりうる。ボトルの底に高さ5 mmほど残った状態で冷蔵庫に戻すと、むぎ茶アライアンスに加盟した別の人間に事実上製造を押し付けることが可能となる。こうして製造コストを押し付けられた側の取る策はいくつか考えられる。一つはその場で相手方を叱責し、製造を命じること。これはアライアンス加盟が2名の場合にのみ可能である。なぜならばアライアンスが3名以上の場合、誰が製造コストを押し付けたのか特定が困難となるからだ。一つは夕飯風呂掃除セックスその他の対価を渋り、事実上のストライキをもって対抗する方法だ。これもアライアンスが3名以上となると戦略が取りづらい。「むぎ茶ぐらいでガタガタ言うなよ」などと言われる可能性すらある。狡猾にも製造コストを押し付けたことを矮小化してあたかもこちらに非があるかのように話をすり替えている。

 かようにも揉めるのであればもういっそのこと水道水を飲めということにしてしまうか、あるいはペットボトルのむぎ茶を共同出資して買ってこいという話になる。お金で解決できることにはお金を払おう。貨幣経済は万歳である。縁側でセックスするシーンで置いてあるむぎ茶とお盆とコップがメーカーロゴ入りのペットボトルだったりすると情緒がないがしかたない。「持ちつ持たれつ」を許容していただけない場合はビジネスライクでいきましょう。

 

・むぎ茶の安全

 製法で味が変わるため家によってむぎ茶の味は異なるのだが、それはさておいて製法の問題というのもある。水道水を使った水出しむぎ茶が一番保存性が良いというのは意外に思われるだろうか。これには当然理由があって、水道水には消毒用の塩素が入っており、煮出しということで沸騰させるとこいつがぜんぶ抜けてしまうのだ。熱帯魚や金魚を飼育なさる方なら溶存酸素量が温度上昇とともに減っていく曲線を思い浮かべられるだろうか。気体一般にその法則が成り立つため、ボコボコと沸騰させると水中の気体はなくなってしまう。

 ……という塩素の話と真逆になるが、病原性大腸菌O-157を抹殺するには摂氏75度以上で1分以上が必要である。したがって75度より高い温度で煮出したむぎ茶をその温度のまま専用ボトルに詰めれば少なくともO-157は殺せることになる。あちらを立てればこちらが立たず、どちらがいいという結論は定量的に評価しないと書けないのでやめておくが、むぎ茶づくりにも少しばかりでいいから科学的な根拠を持ってやってみてはいかがだろうか。

 

 

 むぎ茶ぐらいいくらでも作るしボトルも洗うからむぎ茶飲みながらセックスしてくれる美人と仲良くなりたい。