新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

同人誌感想 「エネルゲイア」((株)立谷川造船/新川)

 実のところ、去年会社を辞めて飛び出したとき、相当な不安があったことも確かである。新卒が一年半で退職。三年居なきゃ退職金は会社が没収でゼロ円、貯金は3桁と少し、クルマ、なし。引っ越し先で買う。転職先が万一合わなかったときの保険、なし。支えてくれる恋人、なし。……ところがどっこい、退職というのはそれ以上に自由でもあるのだ。会社へ行く必要、なし。趣味な連中からお呼びが掛かったときに有給申請をする必要、なし。うっかり出先でオンナノコと仲良くなって月曜の昼までラブホで寝てしまっても職場へ体調不良(大嘘)の電話をする必要、なし。ナシナシ尽くしの自由業、無職。万歳。国民健康保険やら、向こう一年の住民税やら、家賃やらの不安はありつつも、やはり浮き草暮らしのいいところはフットワークが軽いことにある、そうは思いませんか。葵の家紋じゃなくてホテイアオイの家紋でチーム自由業が結成できそうだ。ビバ!浮き草!なんて考えていた時期が僕にもありました。引っ越して車を買って、合わないカーテンや箱に詰めっぱなしの本を収める本棚やら、プロパンガス用のコンロやら諸々買って揃えると3桁あったはずの貯金がガシャガシャと音を立てて消えてゆく。これは日本円ではなくてボーキサイトの残量表示で、空母の女の子を養っているのか、いや現パロだったら彼女にボーキサイトは要らないはず……と思っていた頃に我思う故にヒモになりたい。そんな話をしていると著者本人からダイレクトマーケティングを受けたのが「エネルゲイア」だ。

f:id:sasamatsu:20170901143019j:plain

 なんと同人誌には珍しい文庫サイズで送られてきた。やわらかくておいしそうな龍鳳の表紙がこれまたおっぱい(語彙力崩壊)。艦これ現パロが三作入って500円と大変お求めになりやすい一品。

www.pixiv.net

 ということで本書はBoothからお買い求め頂けますの。

tachiyagawasb.booth.pm

 以下ネタバレを含むのでしばらく改行があります。

続きを読む

#C92感想 「NAVAL Trading Co., Ltd 003」(CASTLEPOINT/てぃーえー)

 岡山から新幹線で東京へ。のぞみ号が取れれば乗り換えは要らないが、時により新大阪駅での乗り換えが必要になる。せっかく駅に降り立つのだ、たとえ乗り換えであっても、この好機を逃さぬよう何をするかというと、車内販売で買えない食料を買い込むのだ。たとえて言えば赤福。風を切り裂いて走りそうなフォルム。8つ入りと綾鷹を1本買い、東京行きに乗り換える。そして京都到着まででなくなる赤福。口直しに車内販売でスジャータのアイスを……。と、読むだけで血糖値が上がりそうな話はこの辺にしておいて、今日はブラック・ラグーンみたいな艦これ同人をご紹介。

f:id:sasamatsu:20170902023047j:plain

 今回は長良型軽巡洋艦四番艦「由良」がドチャクソ引っかき回していくようです。例によってここから先はネタバレを防ぐべく改行改行。

 

続きを読む

#C92感想 「秋雲先生小説合同 "My Funny Autumncloud"」(スタジオ蟹工船)

 同人作家秋雲先生、という概念がある。史実で、乗艦していた信号員に絵の達者な者がおり、沈みゆく米国航空母艦の様子をスケッチした、というエピソードから、艦隊これくしょんに於ける擬人化キャラクターも随所で絵を描く設定がなされ、「同人活動を行っていて同人誌即売会に参加しているのではないか」という解釈がなされることから生じた概念である。活動ジャンルとして、何故か男性向けであろうという解釈がなされることが多いが、これは秋雲先生と出会う"みんなたち"の願望めいたところがにじみ出たものだと思う。私ですら思う。男の性欲にストライクな絵を描く同人作家が目の覚めるような美人で、気さくに話しかけてくれて、タイムラインで下ネタ混じりのリプライをやりとりする……という一種の理想郷を妄想するだけなら無料、それを物理的な形にまとめて本を出すのも自由、というところから生まれたのが本書、「秋雲先生小説合同 "My Funny Autumncloud"」だ。

f:id:sasamatsu:20170817105659j:plain

 

 合同誌であるから各作品について感想を記すこととする。例によってネタバレを含むから未読各位はここいらでUターン願いたい。

 

続きを読む

#C92感想 「君と曙光の中で」(ぷかぷか亭/プッカ)

 衝撃とともに夜の品川天王洲を歩いたあの日から、はや2週間。新幹線で自宅へ戻り、勤労の傍ら山を越えて名古屋へ遊びに行ったりと活動は多岐に渡った。とはいえ出歩いてばかりだと戦利品の消化もままならない?いや、そんなことはない。ちゃんと読んで崩している。いいですか、積ん読というのは最初の1ページを開くのに大きなエネルギーが要りますが、その後はゆるゆると反応が進み、気がつけば一冊サクッと読み終わっているものです。今日は夏コミの戦利品から10万文字超のボリューミーな一冊をご紹介。

f:id:sasamatsu:20170829015309j:plain

 今日読んだのはぷかぷか亭の「君と曙光の中で」だ。艦これ現パロSSに定評のあるプッカ氏が初めて出した同人誌と言うことで大変期待できる一冊。「幼なじみ瑞鶴の初恋」「教え子ビスマルクの密恋」「三十路足柄の偽恋」の三部作でどれもたいへん読み応えのあるお話だった。

www.pixiv.net

 

 pixivに掲載されている作品だと瑞鶴お姉ちゃんのやつが好き。赤城さんが財布持ってくるシーンがとってもお気に入り。

 

 例によってここより先はネタバレを防ぐために未読の方は一旦お引き取りください。

続きを読む

#C92感想 「コスプレイヤーえとろふたん」(banana bread/三瀬 弥子)

 本を読む方には分かっていただけると思うのですが、衝撃を受ける本というのがあると思います。初めて読んだライトノベル、初めて読んだ官能小説、初めて読んだ恋愛小説――あるいは作家に対して衝撃を受け、気が狂ったかのように同じ作家の作品を読みあさることすらあるでしょう。とりわけ、一般書店に流通しない同人誌ともなれば、著者の独創性や尖った部分が商業の枠に納まるよう剪定されずに書かれたものがあるわけですから、そのような体験をすることも多いでしょう。

f:id:sasamatsu:20170816020447j:plain

 というわけで強烈な本を持ってきました。コミックマーケット92の新刊、三瀬弥子氏の「コスプレイヤーえとろふたん」です。艦隊これくしょんの択捉、ではなく、択捉のコスプレをしているコスプレイヤーの女の子「楠木みあ」が主人公なのでお間違いなく。

 

 

 以下ネタバレを含みますのでまだお読みでないかたはこの先に進まぬようお気をつけください。

続きを読む

コミックマーケット92のご案内

 来る8月11日(金)より東京ビッグサイトで開催されます夏コミ、コミックマーケット92にて頒布される同人誌にワタクシ笹松が書いた原稿が掲載されているものがございます。どちらも当日ブースに笹松本人は居りませんが、ご興味のあるご奇特な方はどうぞよろしくお願いします。

 

 まず一つ目。

・サークル名:スマサー

・日付場所:1日目(8月11日)金曜日 東7ホール せ12b

・掲載誌名:季刊スマサー Vol.14

・以下内容:

 スマートフォンに関していれば何でもいいよ、という編集長のひと言により、クルマでスマホを充電しよう!という記事を書きました。シガーソケットに100円ショップの充電器を入れるとスマホホルダーまでケーブルが這っちゃうから、ヒューズ電源を使ってオートバックスで売ってるUSB電源ポートを取り付けちゃおう!という工作指南が掲載されています。カーナビのついていないクルマも充電ポートを取り付けるだけでスマートに!シガーソケットから伸びるケーブルが邪魔だなあと思っている方にどうぞ。

 

 

 次は評論系同人誌です。

・サークル名:わがはじ!

・日付場所:3日目(8月13日)日曜日 東3ホール エ32a

・掲載誌名:’00/25 Vol.7 これからの「性器」の話をしよう~明日を生き延びるための下ネタ~

・以下内容:

 弊ブログ「新スクの淵から」の出張版ということで、理想のセックスってどんなだったっけ、膣内射精ってなんだったっけ、という原点に立ち返った記事を書きました。同時掲載の皆様方が指でつまめそうなぐらい濃ゆいので、私の文章が埋もれていないか若干不安になりつつありますが、もう本はできあがっているのでまな板の上のコイキング。詳細は下記にてご確認くださいませ。

www.wagahaji.com

 

 なお、冬のコミックマーケット93については直接参加を予定しております。ジャンルは艦これ、と申し上げて良いものかどうか、内容は阿武隈コスプレイヤーのR18SSということで、これまで書いたことのないジャンルを指定されてなかなかに困惑しつつ書いたり消したり……。今日も頭を抱えながらああでもないこうでもないと一進一退の脳内攻防戦をしておりますのでこちらも併せてお楽しみに。

 

 例年通りの酷暑が予想されますので、参加される読者諸賢におかれましては、どうぞお体にお気をつけくださいますようお願いします。

 

 それでは、有明でお会いしましょう。

ジオラマをつくる話

 先日は姫路運転会という、Nゲージ鉄道模型を持って集まる身内向けの集会に参加してきました。姫路を含む西日本を中心としたエリアでやりましょう、ということで、では姫新線のとある駅をモデルにモジュールを作ろうと思いました。とは言え初めから何か作ろうとしていたわけではなく、能登屋が須磨-塩屋駅間のジオラマ・モジュールを作るといい、他方あくあちゃんが「古墳」を作ると言い出したので「オイオイオイオイ気合入ってんな、じゃあなんか作るか」と思って、ひとまず岡山のキハ40/120あたりを置いて眺められそうなジオラマを作ることにしました。

 

 せっかくつくったジオラマも展示(という名の放置)しているとホコリが積もってしまいますので、フタができるような構造にしましょう。というわけで、入手性の良いダイソーのディスプレイケースを用意しました。後は手元にあったトミックスのプラットホーム、建築模型などに使うスチレンボードが適量、レール、プラ板、などなど、なるべく手元にあるもので安価に済ませています。

f:id:sasamatsu:20170627203157j:plain

 

 

 地面の表現というのがなかなか難しいのですが、安直に紙粘土を使うことにしました。とは言え、ホームの高さまで紙粘土を盛るのは大変ですから、スチレンボードでかさ上げをします。

f:id:sasamatsu:20170628152229j:plain

 スチレンボードをスポンジケーキに見立てて、クリームを塗るように紙粘土を……

f:id:sasamatsu:20170628183149j:plain

f:id:sasamatsu:20170628183202j:plain

 荒れ地になっちゃいました。中央防波堤のジオラマだったらこれでも良いかもしれませんが、駅前ロータリーがこんなボコボコだとジムニーパジェロしか入れなくなっていまいますので均しましょう。とはいっても紙粘土の扱いなんて6歳ぐらいから進歩がありませんので、そこは無知の知を自覚したところでインターネットに頼りましょう。すると、完全に固まる前にきめ細かい濡れた布で撫でると滑らかになるようなので、雑巾を軽く絞って撫でると

f:id:sasamatsu:20170629000759j:plain

 なめらかになりました。何やら怪しいものが植えてありますが

f:id:sasamatsu:20170726005758j:plain

 外径3ミリの真鍮パイプとLEDを使って街灯を作ったようです。それと、プラ板

f:id:sasamatsu:20170628170814j:plain

f:id:sasamatsu:20170628182732j:plain

 それっぽく駅舎を作りました。0.5 mmのプラ板は光が透けるので、内側は銀色で塗装することに。

f:id:sasamatsu:20170701010651j:plain

 明るいところで見られると恥ずかしいから電気を消してください。……なあに目が慣れてくると電気を消しても見えちゃうんだなあ。げっへっへ。

f:id:sasamatsu:20170701012436j:plain

 紙粘土の大地を水性グレイペイントで塗装してアスファルトっぽくするとこんな感じになります。駅舎が浮いていて光がチラチラしているのがアレですから地面をちょっと掘り込んでおきましょう。あとで。ついでにプラ板ワンマン運転用のバックミラーを立てておきましょう。適当なオレンジ色で塗っておけばそれっぽい。

f:id:sasamatsu:20170701035139j:plain

 型の古いクラウンしかなかったのですが、とりあえず黒く塗って、緑のナンバーをつければタクシーと言い張れるでしょう。実際には5ナンバーのコンフォートですが、3ナンバーのクラウンでもまあ……ジオラマの脇役だし……

f:id:sasamatsu:20170701164509j:plain

 せっかくなので別の車両にも室内灯を入れておきましょう。日本全国だいたいどこでも置くだけで田舎っぽくなるキハ47系の2両編成にLEDテープでお安く……

f:id:sasamatsu:20170703020048j:plainf:id:sasamatsu:20170703030635j:plain

f:id:sasamatsu:20170703032305j:plain

 ホームに付属している「柵」が少し時代を感じすぎるので、建築模型用の透明プラ板に印刷されたフェンスを使いました。スケールが200:1とのことですが、まあ違和感はないでしょう。

f:id:sasamatsu:20170707041022j:plain

 

 本来ならプラ板で公衆トイレを作ったり、植え込みやキュービクルの設置も必要ですが、時間と材料調達の面からタイムアップ。姫路に持ち込みました。

f:id:sasamatsu:20170708144634j:plain

f:id:sasamatsu:20170708144736j:plain

 後ろにある大きなのが能登屋作の「須磨~塩屋間」のモジュール。当日私が作ったほうのモジュールは「阿字ヶ浦駅っぽい」とのことで、ひたちなか海浜鉄道の車両や茨城交通のバスと一緒に記念撮影。当日は皆様ありがとうございました。

 

 遠目に見ると良い感じです。枕元に置けるサイズのジオラマを作ってみてはいかがでしょうか。

f:id:sasamatsu:20170726011720j:plain