新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

正常性バイアス

 あたりまえはあたりまえじゃなくなる、というお話。みなさまは正常性バイアスという言葉をご存知でしょうか。韓国・大邸での地下鉄火災ですこしだけ出てきた言葉です。あの事件では地下鉄で焼身自殺を図った男が放った日によって1編成が丸焼けに、そして対向列車が入ってきて燃え移り、都合電車2本とひと駅まるごと焼けてしまいました。その際の防犯カメラの映像には、電車内に煙が立ち込めるにも関わらず席を立ったり逃げたりしようとしない乗客の様子が映っていました。「電車が燃えるはずがない」「電車内に煙が立ちこめるわけがない」「俺が今日死ぬわけない」と、明日が来ることを疑わない姿勢というのは大切ですが、このようにもし本当に大事件が起こっているのに正常な認識ができかねると命に関わります。

 

 正常性バイアスというのは正常な状態が今も次の瞬間も、帰納的に明日もあさっても続くであろうと願ってしまう人間の弱点なのかもしれません。何度も申し上げているように、満員電車で隣の席に座っている爽やかなサラリーマンが自宅の椅子に奥さんと娘さんを縛り付けてバイブを挿入して放置プレイをしながら会社へ向かっているとは思わない、これがすでに正常性バイアスのひとつだと私は考えています。そもそも、スーツを着たサラリーマンからは性行為の香りがしないのです。ひょっとしたら朝から射精してきたかもしれないという疑いの姿勢というのも時には大切です。

 

 かと言ってあまり疑いすぎるのもダメでして、「世界の真理に気づいたあなたに」みたいな新興宗教団体がおくちをぱっくり開けてあなたを待っています。この世は地獄で満ちている。信じる者は救われる。救われてくれ頼む。救われなさすぎる人が増えると税収は落ち込むし消費は冷え込むし債権回収のサービサーが黒い世界に拍車をかける。

 

 

 とまあこんなことを書いておきながら朝礼で同じ部署のおじちゃんが定年まで10年を残して退職し脱サラでお店はじめますよろしくねって言われるとえっあっ最終出社がもうすぐじゃん今の仕事どうしよ全部俺がやんの死ぬやん勘弁まじ勘弁若くて包容力あふれるおねーちゃんのおっぱい吸い吸いしたい仕事したくないえっマジかんべん勘弁、と慌てふためいてしまうのだ。修行と覚悟が足りない。そう、自分ですら今のような生活が向こう数十年未来永劫に続くのだろうかと考えてしまうのだ。学生時代もそのような思いがあったからこそ就職という生活の変化は憂鬱であった。普段からブログやTwitterで「人間の本質は変化である」などとドヤ顔で語りつつも言う本人は変化を望んでいないというのが"本質"なのかもしれない。

 

 もちろん、変わらないという安心もありますよ各位。親の愛情とかね。たぶん電話一本かけて会社辞めたわしばらく養ってちょうだいオヤジまた俺の保険証くれよって言ったら心配して受け入れてくれると思います。「や、単にニートしたくなった」とか言うだけでも数年ぐらいはマジでニートできるんじゃなかろうか。みたいな仮定の話をしたら「親がいつまでも元気だと思うなよ」って返されました。そりゃそうだ。人間の本質は変化であるから老いも変化であり人間の本質だ。

 

 

 老いるとかいう人間の本質より受精して着床してお腹が膨らむっていう人間の本質を体験したく思います。やっぱり膣内射精がナンバーワン。