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新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

つばめ

 職場の軒先を目にも留まらぬ疾さで飛翔体が行き交う季節となった。そう、つばめである。スワローである。日本で一二を争う有名な渡り鳥だろう。白鳥より広汎に見られるから一番有名かもしれない。目の前を飛び交うスピードは確かに速さの象徴とも言えそうだ。時の日本国有鉄道蒸気機関車の側面(デフレクタ、除煙板という部分)にツバメのマークを貼り付けたりしていたし、国鉄の野球チームはスワローズである。今でもJRバスの側面にはツバメの絵が描いてあるから、どこかで目にしたことはあるだろう。C62型蒸気機関車の2号機はデフにツバメがついていて、愛称を「スワローエンゼル」と言う。「スワローつばめ」とか言うな。なんかちげえわそれ。座席未指定券という制度のセンスは気高いツバメのエンブレムに似つかわしくない。……とかいうと懐古厨とか国鉄至上主義者って言われちゃうんですっけ。まあええわい。

 

 そのC62型蒸気機関車であるが、49両すべてがD52型蒸気機関車からボイラ他を転用して作られた。C62型は旅客列車向けであるがD52型は貨物列車向けである。別段鉄オタでもない限りはどっちもSLってことで黒くて煙吐くやつという認識をしていれば良い。しかしながら、こいつらを擬人化するときに「旅客機は女、貨物機は男」とやると途端に面白くなる。可憐なC62型に「おはようございます兄貴!!!!」と挨拶するD52型、というシーンが描ける。てか昔どっかの擬人化個人サイトで見た。確か、小樽築港機関区の9600型が「水曜どうでしょう」よろしく全国に配置された同型機の兄弟を訪ねて歩くという連載漫画があったサイトだ。あれ面白かったからまた見たいんだけどサイトまるごと消えちゃってるのよね。かなしみ。標準軌化改造されて戦時に大陸へ渡った伝説の長兄9600号機を訪ねて行くシーンは涙なしに語れない。

 

 

 私は転勤族の子どもとして育ったので、つばめを見ていると「お互いに住む場所が落ち着かないと大変だな」という感想を抱く。AUGUSTの「Fortune Arterial」では同じような境遇の主人公:支倉孝平にだいぶ親近感が湧いたりしたが、転校初日に寮の女子大浴場に間違えて進入し、美人の裸をうっかり見たようなイベントは存在しなかったし、転校先では毎回道化師みたいなことをして数年やり過ごしてその土地を去るという処世術ですらない要らぬスキルばかりが磨かれていった。当然ながら幼馴染の美人な女の子とかも存在せず、生まれてから3ヶ月間だけ県営住宅でお隣に住んでいた女の子は、時が流れて私の高校から2駅離れた高校に通っていたそうだが、その間に会うことはなかった。その後、私の高校で、やきう部所属のとある同級生とその女の子が付き合っているという話をどこかで聞いた。なぜだか顔も覚えてないのに若干寝取られたような気分になった。なぜだろう。3年ぐらいごとに引っ越して人間関係焼畑農業していれば残念ながら当然なのだが、だからこそ、物心ついたころから信頼関係のバックボーンが太く築かれた幼馴染カップルというものに強く憧れる。ある日突然考えた。どうして俺は頑張っているのだろう。労働。義務。権利。ほんの少しの希死念慮

 

 そろそろ安住の地を得て転勤に怯えずのんびりと暮らしたいのだけど、どうやら預金残高2億円を達成してからの退職早期リタイヤっていう手しかそういう暮らし方はできないようなので、私は子宮とのご縁もなかったということで一生引っ越し屋と仲良くしないといけないらしい。とても悲しい。たとえ吸血鬼でもバケモノでも美人だったら許すから人生巻き込んで安住の地を作って欲しい。

 

 

 おっぱいぽよぽよのおねーちゃんに甘えて労働を拒否したい。

 

 金曜日殺す。