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新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

場立ちのトレーダー

 場立ちのトレーダー、というフレーズは伝わるだろうか。かつて、株式取引というのはコンピュータではなく人が手を上げて売り買いのサインを提示し、値段が上下するという仕組みを採っていた。目尻を指さし、両手でおっぱいをつくり、手のひらに三本指を立てて、これで「明治(メジリ)乳(おっぱい)業、300株」という意味になる。冗談だと思うなら「東証 ハンドサイン」あたりで検索してみては如何だろうか。伊藤忠が伊藤チューだからって投げキッスだったりするんだぞ。ビックリだ。コンピュータ登場以前から株式市場は存在し、なんともまあ贅沢なことに人間でサインを出していたのだ。

 

 そんな東京証券取引所も1999年にコンピュータ化され、立会場は姿を消してしまった。今でもテレビのニュースで株価を報じる場面では、かつて立会場を映していた名残として、東証アローズ内マーケットセンターを映すことが多いように思う。

 

 さて、今でも魚や野菜の市場へ行けば、活気あふれる取引の光景を見ることが出来るが、おおよその市場というのは一般公開されていない。食品を扱ったり現金を扱ったりする以上、部外者がうろついていてはマズいからだ。ところが、最大規模だと年間2回ほど、ずぶの素人さんでも歓迎の、活気あふれる市場が開かれている。場所は東京都江東区東京ビッグサイト

 

 カンのいいこちら側の皆様はもうおわかりだろう。そう、コミックマーケットだ。なにせ名前にマーケットと入っているだけではない。全国津々浦々から、サークル参加者は自らの描きたい欲望を、一般参加者は読みたいという欲望を、それぞれが自ら"場立ちのトレーダー"として身を投じる超巨大欲望市場、それがコミックマーケットだ(個人の解釈です)。

 

 中世風異世界モノでも市が立つと人の交流が活発になるという点は踏襲されるようであるし、ここ東京:有明においても日本全国津々浦々・世界各国からもそれぞれの思惑とかなりの好奇心を抱えた人々が濃密に交流するように思う。市場が活発なのは良いことですから、それぞれの利害が一致すればなんでもかんでも取引に応じる準備がある、ポテンシャルの高い人々が寄って集っているわけであって、だからこそ年間2回、数日間だけ有明の地に立つ、まるで陽炎のような夢の市場は連綿と受け継がれていくのかもしれない。

 

 以下、地方の印刷所から搬入される"欲望印刷物(同人誌)"情報を引用して終わる。

 

 

 

 

 

 それでは皆様、今冬も有明でお会いしましょう。