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新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

とうじんぼう

 305号線をクルマは海へとひた走る。行き先は越前海岸・東尋坊。俗に言う自殺の名所であるが、実体はこんぴらさんの参道を100メートルほど移植したような観光地である。押し寄せる日本海の荒波。昼ドラで最愛の人物を殺めてしまった犯人が飛び込もうとすると、船越英一郎演じる刑事が止めに入り、罪の告白が始まる……。そんなシーンが思い浮かぶような名勝地である。……あくまで、昼間は、であるが。さて、305号線を走るこのクルマ。時刻は真夜中・ウシミツアワー。東尋坊到着時刻は午前2時である。なぜこんな時刻に国道305号線を爆走しているのかは秘密であるが、おおよそ碌でもない野暮用であろう。有料駐車場とはいえゲートに当然人影はなく、入り口にロープも張られていないのでそのままクルマを止める。

 

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 前述のように、昼間は賑やかなお土産屋が開き、観光客が観光バスで乗り付けるような活況が思い浮かぶが、時刻は午前2時である。海岸へ歩をすすめると犬に吠えられる。ガラス戸のむこうに番犬と思しき姿が見える。こんなところへ来てまで眠っていない生き物に存在を認知されるとはなんなのだろうか。よもや、よくある自殺志願者と間違われているのではなかろうか。この犬っころめ。犬のくせに生意気である。

 

 さらに進むと喫茶店のようなお店があり、なんと扉が開いているではないか。よくよく見てみると人の気配もある。こんな時間にも人の気配をさせておくことで自殺志願者を引き留めようという試みだろうか。とはいえ丑三つ時である。さっさと用事を済ませて立ち去ることとしよう。

 

 さりとて岩場は完全な暗闇であった。足を踏み外せばその瞬間に天国のおじいちゃんおばあちゃんとご対面である。ヘルメットに懐中電灯がついているような山岳用の装備が要るような場面である。なぜ昼ドラで晴れの日の昼間にしかやらないかよくわかる。こんな真っ暗闇で撮影したら役者さんが奈落の底へおっこっちまう。舞台の奈落ならケガで済みそうだが(それでも大事故だ)、ここでは命のやりとりをすることとなるだろう。携帯電話に懐中電灯機能がついていてよかったと心底思いつつ慎重に慎重に海辺へと近づく。

 

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 用事はすぐに済んだのでクルマへ引き返す。何もこんなところまでわざわざガソリンを燃やした上に命まで燃やすつもりはないのである。カーナビアプリに次の目的地をセットして走り出す。……どうも進む方向がおかしいような気がするが、左折表示まであと2キロかとそのまま進める。15分ほど走っただろうか。沈黙したカーナビアプリを訝しみ、クルマを止めて画面をつつく。……。なんということだ、スマホがフリーズしているではないか。あわててアプリをすべて落として再起動する。どうやら目的地とは真逆の方向に15キロほど進んでしまったようだ。カーナビに従って来た道を引き返す。

 

 途中、交差点で曲がるべくブレーキを踏むと、ペダルの挙動がおかしく、異常に振動し始めた。クルマ全体に軽く衝撃が走ったような気もする。なにか小動物かなにかと接触したのだろうか。クルマを止めて確認するが、特にぶつかった跡も見当たらない。なんとも不気味な思いだ。固まるスマホ。何かがぶつかったような挙動。単にボログルマと安スマホのせいだと片付ければそれで済むが、どこかこの世の理屈では説明できないような不気味さを感じるドライブとなった。

 

 深夜に長距離ドライブするとクルマが少なくて快適だけどオービス見てヒヤっとしたりラブホ見てしょんぼりしたりするよねっていう話でした。

 

 俺だって愛液まみれのぱんつしゃぶりてえよ。