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新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

ユーロ危機

 今日のお題はユーロ危機。欧州で国境をまたいで使える通貨として鳴り物入りで登場した(気がする)ユーロ。今ではバルト三国でも使える通貨として流通するすごいやつである。日本という場所から見ると、1単位通貨あたりの値段が米ドルより10円ぐらい高いハイオクガソリンみたいなヤツ、という認識しかしていない私のような能天気野郎も多いであろう。なにより複数の国家で通用するのはともかくとして、法定通貨として使われるというのがいまいちイメージできないのは島国で育ったからだろうか。国境をまたいで両替商を探してどうの、というと中世の行商人のようなイメージばかりが先行する。あるいは電波少年か。両替屋に札束ちょろまかされてその後両替屋のオバハンが警察に捕まるシーンは印象的だった。なすびが懸賞だけで生活させられて、ザブトンで局部を隠してキムチを受け取るシーンと同じくらいに。

 

 つまるところユーロ危機と言われてもピンとこないのが実情である。ギリシャとかアイルランドとかが財政的に終了して、そこをドイツがメルケルの顔芸でなんとか保たせているというのが日本国民の認識である以上、それ以上の詳細情報は不要だろう。ギリシャのアイツらはシバかれパワーが足りない、気合いが足りねえだらしねえなあギリシャのギリってのはキリギリスのギリかよ、と、遠い世界の他人事で済ませておけばよかろう(よくない)(申し訳ない)。

 

 通貨がヤバい、というイメージすら掴みかねるのが日本円を通貨として利用する我々の悪いところだ。なにしろ、「何かしら」が起こると円が高くなるのだ。笑うしかない。これはトヨタ自動車を始め、日本が長らく輸出メインで食ってきたから、「円安め」のほうが国内は美味しく頂ける人が多いからだと小学校では説明される。……だからといって日本国内が無能政治に侵されたり大震災が起こったりした際に円が強くなって良い理屈にはならないわけだが。

 

 ここで少々為替の話をする。簡単のためにまず1ユーロは100円とする。日本国内で100円のアイスクリームを輸出し、ドイツのFKKの売店で1ユーロで販売する。アイスクリーム屋は1ユーロを得る。ところが、輸出して1ユーロをもらうまでの間に1ユーロは90円になってしまった。するとどうしたことだろう、100円のアイスをドイツに輸出したがために10円の損をしてしまった。……ところが、だ。このアイスクリーム屋が為替証拠金取引、いわゆるFXをやっていたとする。アイスクリームを輸出したのと同時に1ユーロをFXで売る。するとその場で100円が手に入る。アイスクリームが売れた後でユーロが50円になろうと知ったこっちゃなくて、その1ユーロを返済して、手元には100円が残る。……というふうに、為替証拠金取引というのは為替をおもちゃにしたバクチではなくて、実体のある商売を営む場合の為替リスク低減策のひとつである。輸出先の通貨を売っておいて、先に売上金を手元に持っておくと考えれば前借り、という感じの借金に近いことがわかる。けっしてチャートが荒ぶった翌日に電車へ飛び込んでみたりするためにあるのではない。実体のある商売が伴っていれば、たとえドルがナイアガラしようが、ユーロがぶっこいてEUが終わろうが、命まで取られはしないのだから。

 

 基本的に通貨がヤバくなると一般的には価値が下がることになっている。記憶にあたらしいところではジンバブエ・ドルだろう。インフレの制御に失敗し、最終的に100兆円札を発行したことは特筆に値する。その後は大規模なデノミネーションを行ったが、ついに廃止。農業の不作と合わせ、政府に求められるがまま中央銀行が発行を行い、結果としてモノ不足なのに通貨量がバカみたいに増え、物価の暴騰と相成ったらしいがそのあたりは経済学者におまかせしたい。私は大学の一般教養で取った経済学の、とりわけ米国穀物価格がドラスティックに引き下げどうこうという話を7割寝ながら聞いた範疇でしか経済学を理解していないのであとは任せる。

 

 身近なところだと日本もハイパーインフレを経験している。戦後すぐの混乱期である。預金封鎖と新円切替でインフレを抑制しようとしたようだが、折からのモノ不足により、建売住宅の価格も戦前の200円から、昭和22年場面で数十万円にまで高騰した。「この世界の片隅に」ですずさんが心配したように、キャラメルの値段もどんどん上がって行ったのだ。私の生家の土地もこの頃購入され、50坪で2,000円だったと聞いている。とにかく、物の値段が去年の2倍、来年はその倍、となる時代であったため、手元の現金は何かしらのモノに変わってもらわなければ安心できない。貯金は無駄である。今では想像し難いことだが、今300万円持っているとして、来年の今日まで使わないと100万円になっているかもしれない恐怖がそこにはあったのだ。

 

 そのようなインフレ局面で一番お買い得なのはなんだろうか。なるべく価値の減らないものがいい、と考えるとそれは人間である。そう、現金で持っていても意味がなくなるくらいなら家族に食わせてやるほうが良い。世間体もついてくる。中出しセックスし放題。ラブホ行って旅行行ってクルマを買って、とにかく現金以外の何かしらを得ておかないと大損ぶっこくのだ。金価格ですら安心できない、ましてやアズキの相場などまるで分からないのだからなるべく価値の減らないもの、価値の増えるものとなると家族、とりわけ子供であろう。日に日に成長するわけだから100グラムあたりの価格が同一であるとすると食わせれば食わせるほど大きくなってお買い得である。

 

 翻って現代、どうだろうか。完全な独断と偏見であるが、デフレ傾向はあと5年は堅調に思われる。そうなると現金を溜め込んでおくほうが有利である、というのは何度も話したとおりだ。近所のハードオフで2年前の、最低限の性能のビデオカードが4,000円で売られているのに、同様に最低限の性能のビデオカードがアマゾンで新品2,980円だったりするのだから、選択肢を増やすという意味では現金を現金の形で保持し続けるほうが有利である。当然、現金を湯水の如く吸い取られることはしないほうが身のためである。どうせ付き合うなら銀座で喫茶店に入りたがる女ではなく土日はパジャマでゴロゴロしている女だ。カネは徹底的に貯めておいたほうが有利なのだから。バブル期の価値観をそのまま輸入しているようなバブリー女は放っておけば良い。デフレ局面が終わるまでには勝手に劣化して阿鼻叫喚であろうから、そういう金のかかる女の相手はインフレ局面の到来まで待てばよいし、その時その時で若い女は居るだろうから心配は要らない。

 

 ユーロがぶっこいてハイパーインフレになったらむこうでお嫁さんもらおうな。