新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

宗教テロ

 今日のお題は宗教テロ、なかなか難しくて炎上しそうなテーマだ。私の生まれ育った家は真宗興正派のお坊さんが出入りするタイプの一般的な田舎のおうちである。いわゆる「本家」と代々お付き合いのあるお寺さんがあって、何かしらの時にはいつも同じお坊さんが来てくれる。讃岐の国の真ん中らへんだけかもしれないが、坊さんのことを「おじゅっさん」あるいは「いんじゅさん」と言う。前者は、少し調べると徳島・香川・奈良県宇陀郡・熊本県玉名郡あたりに特有らしく、「御住持様(おじゅうじさま)」という言葉から変わったものだという。後者は「院主さん」と書くそうな。一般的な、活版印刷されるような全国に出回る小説などではまず使われない表現かと思われますし、校正で「住職」とか「坊さん」に直される言葉かなあ、どうだろうなあ。

 

 とまあうちの寺の話はともかくとして、宗教テロのお話をせねばなりません。ポアです。ポアだ。というわけで、海外の地に足付いてない話をしても無学がバレますので身近なテロリズムということでオウム真理教がしでかした地下鉄サリン事件のお話をしようかと思う。とはいえ能書きやら死者やら並べてもWikipedia目指しているわけではないのでそういう役割は他に譲りまして、手近に始められるテロ対策も交えて少々お話をしよう。

 

 1995年3月20日の朝ラッシュに起きたのが「地下鉄サリン事件」である。現場となったのは千代田線、丸ノ内線日比谷線を走る列車で合計5本、たった5両だ。首都圏を縦横無尽に、ほんの2分やそこいら間隔で列車が続く中でたったの5両にサリンを撒いて、13名が亡くなり、おおよそ6,300人の被害者が出た。東京の地下鉄というのは複数両を繋いでいるから、丸ノ内線なら6両中の1両だ。2分やそこいらでバンバン走る地下鉄の、更に、6両中の、たった1両。たった1両にサリンを撒く、これを5ヶ所で同時に行うだけで東京の地下鉄を機能不全に陥らせ、多数の死傷者を出した。

 

 ここで、読んで今日からあなたの身を守る本質情報を提供することで著名な笹松ブログ「新スクの淵から」では、今では記憶から薄れているであろう、サリンの撒かれ方について説明する。なんでも、お弁当サイズの容器を、新聞紙でくるみ、それをポリ袋で包んであったのが「サリンのパック」で、それを電車の床に置き、傘でつついて穴を開け、そのまま逃走した、というのが実行犯のしでかしたこと、なのだ。これは重大なことだ。車内放送で言う、「持ち主の分からない不審な荷物がありましたら、触らず、すみやかに乗務員、または駅係員までおしらせください」の"不審な荷物"とは、"サリンのパック"であったり、誰のものでもない鞄(爆弾かもしれない!)であったりを指す。多くの場合は単純な忘れ物で、回収した鉄道係員が遺失物として登録し、事なきを得る。しかして、命を脅かす危険な物体であったら……。不自然に放置されている網棚の荷物は誰のものだろうか、気にしたことはあるか?電車の床に不自然に弁当が置かれていないか?荷物を傘で故意に突いたりしている人は居るか?いま一度、周りの安全をお確かめ頂きたい。

 

 人生とは「まさか」の連続である。満員電車で乗り合わせたいつもニコニコしているおっちゃんが、「まさか」放置プレイ大好きの鬼畜ドSで、自宅のベッドに奥さんを手錠で固定して目隠しとボールギャグまでつけてドロドロにしてるとは思わないでしょう?あっちの女子高生は「まさか」放課後に"パパ"からお小遣いを貰いつつドスケベ危険日妊娠前提特濃おちんぽみるく現金満タン膣内射精されているとは思わないでしょう?やってきたいつもの通勤電車に「まさか」爆弾や毒ガスが載っているなんて思わないでしょう?……というのが正常性バイアスというやつで、電車は爆発したりしないし真面目なサラリーマンはヘンタイじゃないし女子高生は性を知らない、と思っていると「もしも」の時に行動が遅れて命を落とす。飛行機がなぜ「安全のしおり」を読ませるのか、考えてみませんか。

 

 地下鉄駅で小規模な爆発が起きたら速やかに逃げましょう。ひょっとしたらガス漏れかもしれないし、あるいは野次馬を引きつける最初の爆発かもしれない。命が惜しければ野次馬するならオフィスの自席からオンライン鑑賞に限る。どうせ死にたがりはいっぱいいるしみんなスマホを持ってSNSをやっているのだから。地下のように密閉された空間では爆風が強烈だ。銃身のほうに爆風はトンネル方向によく伸びる。「静岡地下街爆発事故」とかで検索しましょう怖いですよ地下の爆発は。爆発もなく、なぜか突然人が倒れ始めたら可及的速やかにハンカチで口鼻を覆い、なるべく現場から離れて医療機関へ急ぐ。神経系のガスかもしれないし、単に酸欠かもしれないけれど、サリンは微量でも解毒剤が必要となった。医者にかかって記録を残し、連絡先を伝えておけば、万一後から重篤な毒物が原因だったと分かっても連絡が来る。くれぐれもいちばん大切なのは命である。あの時現場に居たんだよとあとから武勇伝よろしく女ひっかける話のタネにしたくても死んだら意味が無いだろう。はやく逃げろ。たとえ知り合いでも野次馬するというのなら放っておけ。後で会えたら良かったねで済む話だ。

 

 身の回りの不審者、不審物に気をつけろ、というのは「いかにも」なヤバい人やハロウィンの仮装に気をつけるのではなく、「なんかいつもと違う物がある」「なんかいつもと違う」ってのに気をつけましょうね事故の元ですよ、という意味合いですからね読者諸賢。

 

 そういう自分自身が不審物であった。ざんねん。