新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

同人誌感想 「エネルゲイア」((株)立谷川造船/新川)

 実のところ、去年会社を辞めて飛び出したとき、相当な不安があったことも確かである。新卒が一年半で退職。三年居なきゃ退職金は会社が没収でゼロ円、貯金は3桁と少し、クルマ、なし。引っ越し先で買う。転職先が万一合わなかったときの保険、なし。支えてくれる恋人、なし。……ところがどっこい、退職というのはそれ以上に自由でもあるのだ。会社へ行く必要、なし。趣味な連中からお呼びが掛かったときに有給申請をする必要、なし。うっかり出先でオンナノコと仲良くなって月曜の昼までラブホで寝てしまっても職場へ体調不良(大嘘)の電話をする必要、なし。ナシナシ尽くしの自由業、無職。万歳。国民健康保険やら、向こう一年の住民税やら、家賃やらの不安はありつつも、やはり浮き草暮らしのいいところはフットワークが軽いことにある、そうは思いませんか。葵の家紋じゃなくてホテイアオイの家紋でチーム自由業が結成できそうだ。ビバ!浮き草!なんて考えていた時期が僕にもありました。引っ越して車を買って、合わないカーテンや箱に詰めっぱなしの本を収める本棚やら、プロパンガス用のコンロやら諸々買って揃えると3桁あったはずの貯金がガシャガシャと音を立てて消えてゆく。これは日本円ではなくてボーキサイトの残量表示で、空母の女の子を養っているのか、いや現パロだったら彼女にボーキサイトは要らないはず……と思っていた頃に我思う故にヒモになりたい。そんな話をしていると著者本人からダイレクトマーケティングを受けたのが「エネルゲイア」だ。

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 なんと同人誌には珍しい文庫サイズで送られてきた。やわらかくておいしそうな龍鳳の表紙がこれまたおっぱい(語彙力崩壊)。艦これ現パロが三作入って500円と大変お求めになりやすい一品。

www.pixiv.net

 ということで本書はBoothからお買い求め頂けますの。

tachiyagawasb.booth.pm

 以下ネタバレを含むのでしばらく改行があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタシとあたし」(秋雲、夕雲、巻雲)

 友達なのにセックスする……っていうホモ同人のガバガバ設定はまあホモやる人が身近に居ればわかるわかる、うん、キスはしないのにセックスは出来るんだっていう、べろちゅーが三度の飯より大好きなキス魔からするとなかなか難しい解釈ですが、あると思います。

 大学出てから同じ大学出の人間と出会うとウッソマジかよみたいになると思います。千葉にあるタイプのお騒がせ国立大学だと「え、『世界の言語』まだあんの」「あまりに初回の椅子取りが過激になっちゃって始発前からtwitterで実況してる奴ら居ますよ」とかそういう有名な講義の名前が通じるとか、あるんだなあ。

 よもや予想もしてなかったタイプの人間と良い感じになっちゃう流れが本当に現実味があり生々しく、そうそう現パロってこうじゃなきゃなあとニヤニヤ。

 

「身元不詳」(龍鳳、瑞鳳)

 ぼくも人気ソープ嬢のヒモになりたい。ノースセンジュに吹く風は。「赤線」の入った列車、というのは旧赤線を思わせる。とっくの昔に赤線制度は廃止になったけれど、全国の赤線跡地はそのまま花街となっているのはご存じの通り。インスタ映えする食べ物の味が雑なところがまたリアル。あのあたりの水道水は荒川か、多摩川か。どちらにせよあまりおいしい水ではない。とはいえ、千葉・船橋あたりの印旛沼由来の水道よりはマシだと思う……。北千住はでかいし直営の駅だし、駅員として働く瑞鳳もなかなか大変でしょう。入眠・起床時刻は出勤のたびに違い、遅番は終電対応、早番は初電対応。通対ともなれば殺人的混雑の常磐線を相手に退勤間近とはいえ怒濤の1時間30分。出札、改札……。時には酷い"お客様"の相手をして磨り減ることもあるでしょうに。

 

 ぼろ雑巾のように転がり込んできた菅くんと同棲できるのも、菅くんが仕事を辞めて、なにもかもに縛られない浮き草になったからだ。本名も素性も明かさぬ間柄で同棲し、愛し合う。夜の世界の住人と、浮き草。ホテイアオイは土に植えても育つという。龍鳳の暮らしから養分を得て、根を下ろす菅くんは、珍しくも土に植えられたホテイアオイのように見えた。池に浮かぶ個体は冬を越せずに枯れてしまうというのもまた、ボロボロだった菅くんのように思える。温かい家、栄養豊富な土。おっぱいのでかいりほさん(龍鳳)。

 

 そして物騒な話に巻き込まれて姿を消す菅くん。やってくる明け番の瑞鳳。そら4時間程度の仮眠で前日の9時から翌日の9時過ぎまで24時間勤務してれば眠いっての。コミケの鉄道島に昼頃から増えるスーツの集団は明け番が多いらしいとも聞くけれど、皆様タフですねえ……。明け番は無料でもらえる休日!とターボスイッチをオンにしてエネルギッシュに動ける人がうらやましくもあり。ボロ雑巾をヒモにして飼っていただけ、と思いきや予想以上に入れ込んでいてショック受けまくりの龍鳳の姿が痛々しい。

 

 同じ接客業としてわかり合えていたはずの瑞鳳とのすれ違いが怒濤のように溢れる感情。昼と夜では世界が違う。やはり違う世界の住人なのか、と複雑な感情で散らかった思考がそのまま文章になったかのようで圧巻。

 

 なぜ菅くんが追われていたのか、いや、追われていたというのは龍鳳と菅くんの認識であって、本当に参考人として、ひょっとしたら唯一の目撃者として求められていただけなのかは分からないけれど、これでズタボロになったりほさんが立ち直れるのなら、それは、きっと良いことなのだろう。

 

「荷を降ろす」(加古)

 バイトの醍醐味が細やかに描かれているのは作者の経験の豊富さを思わせる。評論ブログ?ウッ急に頭が痛くなってきたぞ……?なんでだろう?加古が観ることになった映画のタイトルは分からず、鶏頭特有の短期記憶のなさにより「元ネタなんだろ」と検索し、一通り見て違うなと本文を読み進めてあっやられた、という感情に見舞われた。あらすじはこうだった。そうだね。うん、よく知ってる。やられた。

 

 使うアテもないのにブツを持っておくことは大切です。人生には常に選択肢が現れる。「する/しない」「もってない/もっている」「つかう/つかわない」それぞれフローチャート化できますね。持ってないと他方の選択肢は選べず、従ってその後エラい大事になったりする。保険は大切です。不確定要素に賭けるのは得策ではない。自らの意思で確定させられることは確定させておこう。神はサイコロを振らないし、たぶんパチンコもしない。

 

 映画のタイトルが滝のように出てきたら映画が見たくなってしまう。「君の名は」以降なんか観たっけか。しかしまあしばらく酒の席もないもんだ。連れて帰ってもらわないといけないレベルまで酒を飲んだのは6年前の弘前か。当時は先輩にご迷惑をおかけしました。お世話になりました。それ以来ベロンtheベロンになるまで酒でやらかしたことは概ねないはずで、グデングデンになれる人がうらやましくもあり。「意思と自制心が堅すぎる」と文句を言われたことはあるけれど、だってそうしないと後が大変だから。あと酒飲むと歯がザラザラになるのが嫌だ。家なりホテルなり帰って歯磨き出来る程度まででお酒をとどめておきましょう。勢いで女の子とべろちゅーすることになって自分の歯がザラザラだったら恥ずかしくてやばい。酔ってるから酒のせいに出来るけど意思残ってるぐらいがいい。たぶん。知らんけど。

 

 泥酔ックスってあるんですか各位。ていうか前述の弘前ベロンtheベロン事件でも先輩に抱えて部屋まで連れてってもらってお茶買ってもらった記憶まであるんですよ。記憶飛ぶほどってどんなやねんと思いながらも、こればかりは体質だからと言い訳をしつつ、実は記憶にないって言う諸兄覚えてんだろぐらいに考えつつ。他人の脳みそは中身が見えないから便利なんです。

 

 勢いで付き合いてえな。

 

 

 

 あとがきも、「不純だね」って言われそうわかるそれな~~~~~~っていうか恥ずかしくて書けない~~~~~~って赤べこごっこをしながら読んだ。

 

 

 して、りほさんは吉原のなんて店に居るんだい?ねえ?吉原だから出勤には「りほ★」ってなっててナマ中出しOKなんでしょ??????????ねえねえ?(おめめぐるぐる)