新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

たべものの境界

 皆様はぱんつを召し上がったことがあるでしょうか。私はありません。妹のぱんつを被ったこともありません。彼女はそもそもいたことがありませんので、ぱんつは被れませんし食べられません。物理的にないものを食べるというのは電柱や枕木をたべるよりも難しいことです。中国では椅子の足と線路の枕木以外なら食べられるそうですが、ちょっと境界が食べ物じゃないもの寄りな気がします。

 

 さて、ぱんつを食べようと思ったらまず考えるのが「ぱんつは消化できるのだろうか」という点です。ぱんつの主成分はなんなのでしょう。まず、肌着であることから天然繊維、綿あたりで出来ていることにしましょう。ポリ混紡生地だとその時点で石油化学製品寄りなのでたべものの境界線から遠くはなれてしまいます。そういえば、実家にあった「静かなるドン」という作品でヤクザ屋さんの息子が下着の会社に務めていました。「中東がこじれると化繊あがっちゃってパンティの価格に影響すんのよね」とかいうセリフがどっかにあった気がします。お暇な読者は時間のあるときにそれっぽい言い回しの箇所を探してみてください。

 

 しかし、ぱんつが化繊だと我々ぱんつを食べたい人間としてはハタと困るわけです。プラスチックは消化できない。仕方ないので綿100%のぱんつが存在することにして話を進めることにしましょう。綿の主成分はセルロースだそうです。これは塩酸、つまるところ胃酸で分解でき、分解後はブドウ糖になります。やったぜ。食える。ぱんつ食える。

 

 ところが、食道を通り胃で食べたぱんつが完全に分解されるには相当な時間が必要です。あまりもたくたしているとぱんつが腸に運ばれてしまいます。手早く分解するためには液温を上げる、つまるところ胃液をガンガン加熱するという人間離れした行為を強いられます。塩酸を追加したら食道が大荒れで胃に大穴ぶちぬくかもしれないし、あぶないですね。

 

 従って、食べるための繊維、つまるところ食物繊維を編んでぱんつを作ればいいのです。ぱんつを食べたければ、食べられるぱんつから作ればいい。解決策としてはそもそもの出発点から作り変える必要があったというお話でした。

 

 また、別の提案としては、ぱんつ1枚全てを食べてしまうのではなく、一部、特にクロッチ部分の1枚目だけを剥がして食べるという、北京ダックのような食べ方ならば量が少なくて消化が間に合うかもしれません。このように、就職面接で「ぱんつはぱんつでも食べられるぱんつって何だと思いますか」などという謎質問をかまされてもスラスラとソリューションを2つ3つ提案できるようになると一流ですね。

 

 ぱんつを脱がさずにはいたままの状態でぺろぺろしたい、そんな夏の山奥からお送りしました。