新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

1,500円で泊まるナリ

 昨日に引き続き関西旅行の記事。旅行ったって大阪にご用事があって人と会うのがメインでして、そのあとはオマケなのです。午前中にバスで大阪駅の北端に着いて、飯食って髪切って、すげー高いビルで人と会って下界を眺めて、また地下鉄に乗りポンバシ共立電子でリレーを買い、夕刻にお宿へ。

 

 この日のお宿は新今宮駅徒歩5分の立地にあって、楽天トラベルで一泊1,500円の「テレビとインターネット付きのビジネスホテル」であった。この時点でドヤ、いわゆる簡易宿泊所であるとお分かりの方も居るだろう。ディスクシリンダー形状やプレス打ち抜きと思われる鉄製のドア、独特のドアノブ形状からなんとも高度経済成長期のような香りがする客室のドアを開けると、クッソボロボロで得体のしれない液体が染みこんでは乾いたと思しき畳が3枚、布団、テレビ、LANケーブルが転がっていた。

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 あんまりにもあんまりなので写真がボケてしまった。うーむ、1泊1,500円は伊達じゃない。なお、この街では一泊600円から"宿泊"できる施設があり、そのレベルまで行くと畳だけじゃなく寝具も汚いらしいのでさすがにケチで知られる私もそこまでのレベルだと躊躇してしまう。ケチとカタカナで書くと非常にびんぼ臭いが、「経済の知恵」として「経知」と書くと途端にインテリっぽくなる。

 

 割と落ちぶれた最近の若者らしい生活をしている私ではあるが、それでも東京ステーションホテル等の高級ホテルに泊まる機会がまったくなかったわけではない。

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 タダ券で泊まったわけだが、あそこ泊まると15万以上はするよなあと考えれば、東京ステーションホテル1泊分で新今宮では100日滞在できることになる。これが格差か。上から下までまんべんなく人生経験として一度泊まってみると良い。1泊の料金を下げていって、あるところで「あっこりゃあだめだあ」というラインがきっと出てくる。「こりゃだめだあ」のラインとして適切なのは「そこで毎日暮らせるか」である。私は網走の民宿一泊2,600円は十分快適であったが、新今宮1,500円はちょっと数日以上の滞在は遠慮したい感じとなった。したがって2,600円から1,500円までの間に私の1泊の限界値が存在するわけだ。無論、ネットカフェ他で泊まればもうちょい安く快適であろうけれど、部屋に鍵がかかる「宿」というカテゴリでの話である。

 

 閑話休題。この街にはスーパー玉出がある。とあるスジには有名な、パチンコ屋にしか見えない外観のスーパーマーケットだ。そこへ夕食を買いに行った。地元の方々が次々にレジを通っていくので新参者として作法をじっと観察することにした。缶チューハイの買い物が多い。中には缶チューハイと"砂糖"を買っていく人もいる。ははあ、なるほど。この街では缶チューハイが主食であり夕食となり、それでも腹が満足しない人は砂糖をザアザアと流しこむのだろう。脳みそはブドウ糖しか栄養にできないから、頭が資本である人間様としては消化分解すると単糖類となる砂糖を買っていくのは当然の摂理である。……んなわけあるか。山積みの「白ご飯(65円)」や298円の弁当がなかなか売れないなんてどういう了見だ。カルチャーショックである。

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 夕食を食べる。そうすると風呂に入りたくなる。当然、風呂は大浴場であり部屋にはついていない。石鹸の備え付けもない。フロントで石鹸を買い求める。110円。てっきりビジネスホテルにありがちな大きい消しゴムみたいな石鹸が出てくると思うじゃん。

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 なんすかこれ。ひと晩で使い切る量じゃないよね。ここで暮らそうかっていうレベルである。うひゃひゃ。なお、当然風呂もお値段なりでボロい。脱衣所の足ふきマットがなんとも言えない色をしている。ここで長居したら水虫かインキンタムシは避けられまい。カラスの行水を済ませ、トロピカルカラーにカビた足ふきマットに触れないよう素早く着替え、部屋に閉じこもった。やっぱ1,500円は無理だった。つらい。

 

 一度上げてしまった生活水準を下げるのは並大抵の努力では難しいということが嫌でもわかってしまった。質素な暮らしに努めましょう。