新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

ディストピアな明日を希求して

 青春18きっぷで東京へ行き帰りする用事があった。朝4時台に始発の汽車に乗り、姫路・米原豊橋・浜松・静岡・熱海・戸塚と乗り継いで千葉へ。地元で買った石田衣良池袋ウエストゲートパークを読みつつ東へと。主人公みたいに実力と運を兼ね備えてなお組織に属さず中立で仕事をするというのは羨ましいことだ。弱い人間である私は寄らば大樹の陰、という考えが常に頭をよぎる。

 

 翌日に用事を済ませ、子供から大人まで憧れる職業をしている友人と待ち合わせた。何かって?近況報告を兼ねて文庫本を交換するためだ。こちらからはさっきまで読んでいた池袋ウエストゲートパークを差し出し、代わりに有川浩塩の街』をもらった。

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 作品内容に細かく触れるとネタバレになっちゃうので触れないけれど、いくつも琴線に触れる場面が連続してゾクゾクした。久しぶりだ。いつもなら退屈な鈍行東海道も、楽しい本があればあっという間だ。冷暖房完備、程よく揺動、目が疲れたら車窓は流れる便利な読書室が1日あたり2,370円。青春18きっぷは読書用のきっぷなのであった。……違うと思う。

 

「――あのね。優しくしてほしかったら、優しくしてって言わなきゃだめですよ」

 

 首がもげるほど同意したい。人間言わなきゃ伝わりません。言外の意味ってのはもろもろ不利ですから言ったほうがよろしい。

 

sasamatsu.hatenablog.com

 

 だからみんな言えばいいんです。してほしいことを。「3億円欲しい」「おっぱい吸いたい」「美人の汗がタップリ染み込んだ体操服を絞って汗飲みたい」「中出しして孕ませて無責任に死にてえ」言えば誰かがしてくれるかもしれませんが、言わなきゃ誰もしてくれません。してくれる代わりに金銭その他貨幣価値のある行為を求められるかもしれませんが、それはまた別のお話。どっちかというと交渉スキルのあるなしというお話になってまいりますから、霞が関あたりで毎日薄氷を踏む感じのネゴシエートをしてるお兄さんたちに聞いてみましょう。

 

 「してほしいこと」カードに対して日本円または「別のカード」を出して交渉するのが現代資本主義経済ですから、何も別に日本円に恵まれなくともたくさんのカードを持っている方が強いのです。紙幣をよく観てみなさい。「日本銀行"券"」と書いてある。明日日銀が「今日から円じゃなくてヘクトパスカルにします」と言って両替も拒否して通貨がヘクトパスカルになったら円なんか持っててもダメなんです。新円切替ってのはあったから歴史的にはヘクトパスカル切替ってことになるのかな。こうなると頼れるのは金の延べ棒と米ドルスイスフランの他に「己の頭脳」っていう一番大事な資本になりますので、日頃から「明日日本円が紙きれになったらどうしようか」というイメージトレーニングをすることが大切です。私は米ドル建てでうどん屋をしようと思います。米ドル建てのおまんこ専門風俗でもいいか。別に米ドルじゃなくてもうどん兌換券の笹松ドルとか立ち上げて流通させてもいいわけだし両替商にでもなってしまうか。

 

 現実に一部の富豪老人が大量の日本円を抱えて死に円となっている現状を鑑みれば、明日突然通貨切替があっても驚かないのです。たぶん独自の解釈なアドトレーラーを走らせている播磨屋本店の大将も同じようなことを考えてそうだ。

 

 あなたのあしたをディストピア。自分で言うのもなんですけれど、私のような人種ほどディストピアで強いですから、適当に居場所を見つけてヌクヌクと暮らしてみせようではありませんか。別に日本円が使えなくなったってシベリア送りにされるわけじゃあないのだから明日のメシと布団とおまんこさえあれば生きていけるんです。

 

 庭から石油湧け。