新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

タイムカプセル

 過日、高校の同窓会というイベントに出席した。左手薬指にきらきらと光る指輪をつけた美人とか、あとは婚姻届を書いて出すだけなんだけどいつが良いかなあという医者とか、ははあなるほど綺麗な勝ち組ルート入ってるなあ、と思える人を中心に、自己肯定的でなおかつ時間の取れた人間が参加していたように思う、というのは偏見か。かくいう自分もばっちり参加しているじゃないですか、と言われればそれまでであるが、多浪の闇に沈んだヤツと、LINEをやってなさそうなヤツが参加していなかった(これもまた偏見である)ように思う。1年半で新卒入社したところから裸足で全裸で逃げ出すような社会不適合者にもお呼びの声がかかる優良な幹事であるということがわかる。

 

 とまあ歪んだ見方はさておいて、当時の担任と副担任も時間を割いて来てくださった。そこでテストを返却するように名前を呼び、何かを配布しはじめる。封筒のようだ。はてさてなんだろう。

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 当時の私は封筒を閉じたら〆ではなくメと書いていたことがバレてしまう。そんなことはどうでも良いが、封印日と時刻を記しているあたり当時のめんどうくさそうな性格が伺える。他の同級生は封印時刻など書いていないわけだから、横並びがイヤだったか、なにかしらのエッセンスを入れたかったか、まあいい、とにかくめんどくさい男にノリを重視するような若い女がついてくるわけがないとかそういうのはいい。お呼びじゃない。ご利用頂けない。

 

 この封印日前後に当時担任が封筒を配布して、自宅で保管して、然るべきときに返却するということで地面に埋めたりはしないもののタイムカプセルという趣旨で、生徒各位はそれぞれ数日考えてなにかしらを封入し、担任に提出したのであった。2009年11月末、それからもう7年ちょいの月日が経過した今日、さて中身の状態がどうなっているだろうか。

 

 人によって当時のプリントだったり、未来の自分あてのお手紙だったりした。私の封筒は、中身がノートであった。

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 少しばかり表紙に解説が必要だから解説しよう。まず消しゴムの下にはクラスと本名が丸出しで書いてある。持ち物には名前を書きましょうという文化は義務教育で一旦終わる気がするのだ。何故ならば、中学校の教科書には裏表紙に記名欄があるが、高校の教科書には記名欄がないからである。とはいえ、記名欄がなくなったからと言って記名してはいけないという決まりはなく、私は冊子の上面に中学卒業時に貰ったゴム印を押していた。で、タイトル部。「2009年度マル1 メモ同好会」とある。当時、校長先生が独自に校長室内に事務局を置いた組織としてメモ同好会というものがあり、いつぞやの朝礼で「ライフログを取りましょう、メモを取りましょう、きっとなにかの役に立ちます、今なら校長室でノートを進呈」という旨のお話をされたのだ。当時既にネタ帳を持ち歩いていた私は賛同してさっそくノートを頂戴しに行ったのだ。なにせ校長直轄組織であるから、他の部活や生徒会の干渉を受けぬ特殊な組織であった。今思えば、校則にまったく記されていない秘密結社のような存在であったとも思える。この校長の推薦図書スラムダンク全巻であり、校長室に並べてあって昼休みや放課後に読むことが出来たなど、一般的な校長先生のイメージとはだいぶかけ離れていた方だったと記憶している。

 

 というわけで今日は表紙の文字列を解説した。きっと中には当時の美少女と愉しく放課後になにかしらの活動をしていた記録がきっちり残っているのだろう。たぶん。同窓会の場で開いてぱらぱらとめくると「はなまるうどん 210円」なる、どう考えても一人でかけ(中)食って家に帰ってやがるな、というような記録が……おかしい……食べたうどんの数ではなく食べた女の数とか書いてあるはずなのに……。

 

 と、言うわけで、7年越しに日の目を見ることになった当時のネタ帳解読解説シリーズで新年はしばらく持たせることができそうだ。なんということだ。7年前の私は今とほとんど変わっていないではないか。

 

 当時から女体との関わりがなかったことだけは確かだ。