5000兆円欲しい
しばらく意識が明後日の世界に飛んでいた。別にルンバに拉致られて南半球へ連れて行かれていたわけではない。かつてはただただ欲望を書き連ねるだけで記事が出来上がったにも関わらず、筆が進まなくなってしまったのだ。即ちこれは無欲の境地に達してしまったということか。解脱である。プシュケーか。99割寝ていた高校倫理の教科書に出てきそうな単語を並べてみただけだ。人間は考えるアホである。兎に角、自分のことが好きで好きで仕方ない美少女に好意をまっすぐぶつけられてその日のうちに裸で抱き合うような、そういう欲望の灯火も消えたわけではないが、もしそういう欲望が達成された後の「いま抱いたこの美少女の保護者はどんな人なのだろうか」「この美少女を扶養しなければならないのか」「籍を入れるにしても会社に届け出るためにはこの美少女のマイナンバーを調べなければならず、結局住民票を取らなければならない」「いやむしろ今の給料じゃ無理だからクルマを手放さなければ」と、万が一、いや、億に一つもないような都合のいいケースに至ったとしても、背後の不安が拭えない身体になってしまった、というべきか。こう言うと大変不遜になってしまうが、世は自分よりもそのあたりの手続きができないようなアホですら生きられるようにできているからあまり憂いはないのだが、とはいえ出たとこ勝負でうまく回るかどうか、不安材料が多いことには安心して欲望を出しきれないところがある。わかりやすく言えば、好意をまっすぐぶつけてくる私好みの美少女を次の生理までに孕ませるのに不安があるから心の底から膣内射精できない、ということである。
そこで今日の表題である。「5000兆円欲しい」がテーマである。5000兆円。すべて1万円札であったとしても2トントラックで数十台、いや足りぬかも知れぬ。毎年1兆円ずつ使っても5000年分である。5000兆という、有限の数字がついてはいるが、事実上の無限円である。天文学では無限遠という言葉が出てくるがそういうことだ。つまり、金で解決できる事柄の心配が不要になる、シンプルに申し上げれば一生金に困らなくなるということだ。
とはいえ、現実問題として、毎月の手取りが前職より少々増えたとて、足車としてATの乗用車と、遊び車としてMTのロードスター、それに物を運ぶクルマとしてハイゼットカーゴかプロボックス……とか言いながらクルマを3台持つわけにはいかず、現実問題として最大公約数的に日産キューブなんぞに乗っているわけであるし、田舎から東京に出る電車賃すら困窮して出せぬ有様というのは一朝一夕にどうにかなるわけではない。明日枕元に500万円積んであったとしてもそれは端金であり、一生金銭的な苦労がどうにかなる金額ではない。
とはいえ、金銭的な苦労はさておいて、多額の金銭の出費が絡まない人生の選択肢において、先だってのテーマである5000兆円というのは大変揺らがぬ指針として使えるのである。何かしらを選ばなければならない時に「それは5000兆円持っている場合の選択かな?(ポロロン」と、一度脳内で自問自答するのである。なお、"多額の金銭が絡まない選択肢"というのは、単純に、無い袖は振れないからである。
なんだっていい。休日に惰眠を貪っていつもよりかなり遅い時間に起きて後悔するか、寝足りない気はするものの二度寝せずに起きるか、5000兆円持っていれば絶対に後者である。金を使いたくて使いたくてたまらないわけだからだ。あるいは……と考えたところで、お金が絡まない選択肢というのはほとんど存在しないことに気づく。2,000円かかる回転寿司か、280円の牛丼で済ませるか。3万円払ってソープランドに行くか、ソープランドの出勤表を見てタダでシコるか。MVNOに契約を変えて毎月2,000円で昼休みとアフター5にイライラしながらスマホを使うか、毎月8,000円払ってMNOでストレスなくスマホを使うか……なるほど、金が潤沢にあったら悩まない選択肢ばかりだ。これは驚いた。自分でも無意識のうちにカネがないからと選択肢を減らしていた気がしてくる。しかし、大切なことだからもう一度申し上げるが、無い袖は振れない、のである。
そうすると最終的に5000兆円が欲しい場合は5000兆円持ってる女性に選んでもらうのが近道になりそうだ。5000兆円で結婚してくれと言われれば最上である。自分を5000兆円相当へ。仮に5000兆円持ってても結婚して欲しいと相手に言わせれば勝ちである。対極にあるのは、愛はないけどお金は必要だから離婚しないでいるタイプのアレである。専業主婦になって離婚できずに後悔しているから娘は絶対フルタイムで働かせるというタイプのアレだ。お金を稼いでこなくなったら楽しいスピードで離婚の事務手続きが進むであろう。
5000兆円あったらラブホに入るかどうかで悩んだりしなくなるんだろうなあ(反語)