人はなぜ本を買うのでしょうか。読むためです。ところが、本を読む時間も、財布に入っているお金も、有限のリソースです。では、どうやって「読んで楽しい本」を選ぶのでしょうか。"最初のペンギン"という言葉があります。魚を求めて崖から海に飛び込むペンギンは、さりとて飛び込んだ瞬間に、シャチにパックリ頂かれてしまうかもしれないのです。しかしてその危険を冒して最初に飛び込んだペンギンは、より多くのおいしい魚を独占することができます。従って、買ったことのない作家の作品、とりわけ、同人誌即売会でないと手にはいらないような本――いわゆる同人誌――に手を出すのは、一種のバクチであって、商業ベストセラーの文庫落ちを買うような気持ちではなく、「これは面白いのだろうか」と半信半疑で買うわけです。特に、ページ数が多い上に、形態が小説ともなれば、B5サイズ24ページのマンガのように、半分も会場で読むわけにいかず、完全な賭け事のごとく「新刊をください」と申し出、虎の子の日本円と引き換えに、商業誌より割高な本を手に入れるわけです。
とまあ、上記のような冒険をした結果、大変おもしろい作家を発掘することに成功すれば、ときに戦場とまで揶揄される同人誌即売会に幾度となく足を運び、いつしか「毎回新刊を買うサークル」というのがリストアップされるわけであります。そういうわけで、今日はサークル「びびび文庫」のコミケット91新刊、艦隊これくしょん二次創作の『楽章a[mouvement a]』を読み終えたので感想を書いておくことにしましょう。
当然ネタバレを含みますから一旦クッションを置いておきます。既刊の『終わりの花』は少々頭のイカれた鈴熊が楽しめますし、『ランドスケエプ』では、SM分離*1前の横浜駅の濃厚な描写がいい味を出しています。
これら既刊はBOOTHで電子書籍版を頒布されているようです。今回の新刊は物理書籍が虎の穴で委託されています。
!どうじんしについて!
— 蕎麦 (@n_soba) 2016年5月11日
一部既刊はとらのあなで委託頒布を行っています。 https://t.co/5CxGAaL0cX
また、電子書籍版をpixiv BOOTHで頒布していますので、そちらもどうぞ。 https://t.co/EWe7uD2sTT
*1:東海道本線(列車番号の末尾がM)と横須賀線(列車番号の末尾がS)は、今日東京から別の線路を経由して大船に至るが、かつては横須賀線の電車も東海道本線の線路を大船まで走っていた。高度経済成長に伴い、列車本数が増え、さばききれなくなることから、横須賀線の電車を別の線路に移す工事が行われた。その施策のことをSM分離という。