中央紙器工業のTOBと実際の市場価格
ブログを書くのもめちゃくちゃ久しぶりになってしまいました。
20年近く株式取引をやっていて、通算3回目となる保有銘柄の株式公開買い付け(TOB)がありました。
1度目は日本車輌製造(JR東海による)、2度目は東京日産コンピュータシステム(キヤノンマーケティングジャパンによる)、そして今回3度目が中央紙器工業(ニッコンホールディングスによる)のTOBでした。
1度目は手続きが面倒で市場で売却、2度目は単元未満株だったためと、なんと私がTOBに気づかなかったためスクイーズアウトされ、郵送されてきた郵便為替……のような紙片「売渡代金領収証」を郵便局に持ち込んでの換金となりました。

で、今回の中央紙器工業はTOB価格が5,034円と、直前の市場価格の3倍以上となり、応募しない手はない状況となりました。
値幅制限という制度があり(いわゆるストップ高/ストップ安)、発表翌日にいきなり5,034円となるわけではありません。TOBに応募すると5,034円で買い取ってもらえるだけで、必ずしも市場価格が追従するとは限りません。とくに、敵対的なTOBで、会社側が応募を奨励しないケースなど、ホワイトナイトが出現し、更に高い値段で防衛的な取引を提案される場合もあります。
それはさておき、今回の中央紙器工業も、数日のストップ高を経て、TOB価格1株5,034に近い株価での取引が可能な日が来ました。付いた値段は5,010~5,020円でした。10円刻みでの取引となっていたので、最も近い値段は5,030円ですが、これより少し安い値段になりました。
私はそもそも新NISAで中央紙器工業を保有していたので、TOB応募のために別の証券会社の口座を作って移管するのも面倒ですし、NISAによる税の免除も移管日の終値という不確定な数字にヤキモキさせられることを嫌って、市場で5,010円で売却してしまいました。
この、TOB価格である5,034円と実際の売却価格である5,010円の差は24円、この数字に自分の中で折り合いをつけるために理屈をこねていきます(笑)。
さて、仮にTOBに応募できる証券会社に口座をもっていたとしましょう。市場では5,010円で買うことができます。TOBに応募し、成立した場合、お金がもらえるのは3月末になります。TOBが発表されたのは1月末、5,010円で取引が成立するようになったのは2月6日でした。
TOB応募最終日は3月18日、応募するためには前営業日17日に約定しておく必要があります。また、TOBが成立した場合、決済(の開始)日に証券口座に入金されます。今回の場合は3月26日ですね。

さて、では3月17日に、仮に5,010円で市場で買い集めた中央紙器工業の株を、TOBに応募して5,034円で売った場合、どうなるでしょうか。
そりゃ5,034円で買ってもらえて、差額の24円×株数分儲かり、そこから2割ちょいの税金を払うんだよ、なにを言っているんだと思われるでしょう。ですが、キーポイントはまさにそこで、その差額を拾う、TOB応募の面倒を引き受ける行為はトクなのか? という理屈をこねくり回してみます。
簡単のために、仮に手元に5,010万円の余裕資金があったとします。この場合は簡単ですね、即ち5,034万円になるので、24万円の売却益が出ます。17日に買って26日に入るので10日間の資金拘束で確実に24万円が拾えるわけです。
TOBに応募できる、三菱UFJ eスマート証券のワンショット手数料コースだと上限は4,059円だそうです。TOB応募時、つまり売却時はかかりません。
税金は24万円に20.315%を掛けて48,756円です。
手元に残るお金は187,185円になりました。5千万円を振り回して得られるお金としてはしょっぱい金額になってしまいました……?
ではでは、更に更に、あり得ない仮定ですが、5,010万円を、そこらへんの銀行のカードローンの金利で借りてみたと仮定してみましょう。年利2%で5,010万円を無担保で貸してくれる銀行は……ないと思いますが、目を血走らせながら支店長を呼んで、TOBに応募するから貸してくれと言ってもダメだと思いますが……あくまで仮定のため、年利2%で調達してきたとします。
5,010万円を年利2%ということは、単純に1年365日借りていると100万2千円の利子が発生します。1日だと約2,745円です。
ベストなのは3月17日に借りて、26日に返すことでしょう。利息は10日間で27,452円くらいです。
さっきの「手元に残るお金」から、理想的な年利2%で10日間の利息を払うと、159,733円になってしまいました。冷静に考えてみてほしいんですが、5千万円を借りてきてやることが、10日後に約16万円をもらう、なのは割が合わないのではないかと思ってしまいますね。
中央紙器工業の出来高や発行済み株式数を考えても、5,010万円くらいを振り回すのが精一杯のように見えます。
ここらへんでお気づきかもしれませんが、お金を借りてきてTOBに応募すると、買うのが早すぎた場合は下手をすると大損こきます。
2月6日に5,010円で市場で買えたことは事実ですが、ではその日に、上記同様に5,010万円を2%で借りてくると……48日借りていることになり……利息を払ったあとで手元に残るのは……55,000円ぐらいになってしまいました。
実際には信用取引で株を買うときに形式上お金を借りるわけで、そこに2.1%~2.8%の利息がかかります。TOB応募最終日よりもずっと手前から、仮にお金を借りてまで薄い薄い差額を拾いに行く行為に経済的な合理性はないのかな、という結論を書いて、24円差(笑)があるにも関わらず市場で売却した自分の心を納得させるのでした。これはTOB面倒分のプレミアムだ、資金効率を上げるために1日も早く現金化をするぞ、と。そもそも5千万円は借りられないですし。
2025年は幸先のいいスタートになりましたが、買ってから低迷を続けるNTT株の含み損が精神衛生上よくない数字になっています。いくらNISAとはいえ限度があるぞ、と思いながら、NTTの含み損の5倍くらい中央紙器工業のTOBで儲かったので、しばらく含み損のことは忘れようと思います。気絶している人が二番目に儲かっています。一番目はポジションを抱えたまま死んだ人です。