新スクの淵から

笹松しいたけの思想・哲学・技術・散文。

水原涼『甘露』のネタバレを含みます

 一日開けてまたご本読んで感想かよこの猿ゥ!手前で何か生産しやがれこの猿ゥ!……というご批判もあろうかと思われますが、ご本読んで感想垂れてる時期があってもいいではありませんか。というわけで今日は水原涼の「甘露」を読んでみることと致しましょう。と言ってもこの作品、単行本に収録されておらず、雑誌「文學界」2011年6月号に掲載されています。なのでお取りよせることにしました。なんでも、作品を書いたら親には勘当され、恋人は去ったという大変業の深い作品でございますから、覚悟してかかりたいと思いまする。


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以外ネタバレ含み。

 

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ひねくれ回転行列

 今日は数学のお話。かつては私も高校生でしたので、数学の授業というものがありました。数学IIICまでひととおり終わると、受験対策ということで、IAIIBの演習問題を解き、小黒板に自分の答案を書き、前に立ってクラスメイトに説明するという形式の授業がありました。当然出席番号順に解く問題が回ってきて、「次の授業までに用意しておいてくること」となります。私にもその順番が回ってきました。定数は忘れましたが、題意は次のようなものでした。

 

問38.直線y=1/2x-2がある。点A(3,3)について、この直線について対称な点を求めよ.

 

 ははあ、傾きどうしをかけ合わせて-1、直線状に中点が来る、この2点で解くのだなあという簡単な問題です。「笹松くんは問38を、簡単な問題ですからこれに時間を使うのはもったいないですね、ちゃっちゃと説明してください、では来週」などと言われます。受験ストレスで少々おかしくなった高校生、おかしくなります。「(はあ?簡単で時間を使うのがもったいない問題を俺様に解かせてあまつさえ解説までさせるだと?もうたった今ヘソを曲げたぞ!俺が日本へそ公園だ!)」と思ったかどうだか、少々虫の居所が悪くなったのは確かでしょう。

 

 おそらくまともに解くと答えは

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 というわけで(29/5,-13/5)になるようです。……。中途半端ですね。問題の設定が悪かったようです。ところがひねくれた当時の私は思います。「せっかく数学IIICも学んだのだから使うべきでは????そうだ!傾いた直線が気に食わないから傾いてない直線にしてやろう、時計回りに1/2の傾きで回転させてやろう、回転行列を使おう」などと思い始めます。与えられた点Aを、直線もろとも原点中心に角度-θで回転させ、そうすれば直線との距離は単純に足し算で求めることが出来、しかも傾きがなくなっているので求めたい対称な点の座標も足し算引き算で求められます。やったぜ。小学校レベルまで簡単にできたぜ。そして最後に求めた点の座標を原点中心に角度θで回転させて戻せば答えが出ます。

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 すると、先程のやりかたと同じ答えが出ます、というたいへんひねくれた答案でした。ムダに小黒板を4-5枚使って説明したような記憶があります。

 

 ストレスというのは人間をここまでおかしくするのだ、ということがわかっていると、大抵の出来事には動じなくなります。「ああ、この人はストレスでおかしくなってしまったのだ」と思えば慈愛の精神で接することができるでしょう。

 

 昨日の『コンビニ人間』を読みながら、そういえば私もひねくれていた時期があったなあと、思い出しつつ久しぶりに数学のようなことをしてみました。

 

 

 こういう茶番高校生ごっこをしてそのまま制服セックスになだれ込みたい。

村田沙耶香『コンビニ人間』のネタバレを含みます

 タイムラインを眺めていると、ふと、『コンビニ人間』の感想が流れてきた。どんぶらこ、どんぶらこと雑多なものごとが、歩く程度のスピードで流れ行くタイムラインは一種の窓とも言えるだろう。芥川賞受賞作品なのだから面白いのだろうと適当に結論づけて、ではいっちょう私も読んでみようと調べたところ、まだ文庫落ちしておらず、ハードカバーに手が届かない財布事情からして読むのは見送りかと考えた。しかし、なんとKindleでは半額分ポイントで返ってくるという。気がついたらポチっていた。そして、ふとんで寝る前にちょっと読もうと思ったら読破していた。自分でも何が起きたのかわからなかった。ハードカバー一冊をサクッと読み下すのが「ちょっと」と感じられるほどのめり込んでしまった。今日はそんな芥川賞受賞作品、村田沙耶香で『コンビニ人間』を読んでのあれこれをお送りします。以下ネタバレなどを含むっぽいので読んでからもういっぺん来よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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まぼろしのスクール水着

 この話はブログ以外では何度かした気がするが、このブログではまだのようだ。今日は節水にまつわる悲しい悲しいお話をしようと思う。御存知の通り水は大切な資源、とされる。なぜならば、飲み水として適した水質に浄水し、外から不純物が入らぬよう水圧をかけて各家庭まで導水し、というコストは尋常ではないからだ。……とは言うものの、蛇口をひねれば水が出る、水道代はただも同然。自治体によってはほとんど地下水なので水道代は徴収していないところすらあると聞く。日本人はみな、安全と水はタダだと思って居やがる、というのはよく言われる話ではあるが、少なくとも水についてはタダみたいなものだろう。

 

 とはいえ水も資源であり資源というのはえてして偏在している。偏在しているものを遍く行き渡らせるためには貯めて分配する必要がある。典型例としてはダムが挙げられる。水の豊富な地点におおきなコンクリートの堰を設けて水を常に貯めておく。そして適宜必要に応じて水を分配する。古来より文明は大きな川の側で育まれてきたが、現代の土木技術は文明の賜である水道を遍く行き渡らせ、どこでも文明的な生活が送れるようになったのである。

 

 しかして、どれだけダムをこしらえても、長く日照りが続くと水が足りなくなるのもまた世の理である。「貯水率が15%を切りました」「貯水率が0%になったので発電用の水を融通していただくことになりましたありがとう電源開発さん」などと連日のように報道されるようになり、ダム湖の底にはかつての村役場等が姿を現す。渇水である。こうなると水道は圧力を下げての送水となり、ひどいと断水する。水がないのであるから仕方があるまい。

 

 水不足となると一番に絞られる使いみちがある。ひとつは洗車である。特に鉄道やバス等、公共交通の車両を貴重な水でじゃぶじゃぶ洗うことはしばらくなくなる。赤茶けた土埃にまみれた車両が行き交う事態となるが飲み水のほうが大事である。では、洗車以外となると何を絞ることになるだろうか。

 

 答えはプールである。国鉄連絡船の沈没事故以来、泳げる、浮かぶことができると命を救うということで全国遍く学校にプールが設置され、広範に水泳の授業というものを実施するようになりもう半世紀ほどになる。が。しかし。毎年やることであるから、飲水の足りない年にわざわざやることでもないので、水不足となるとプールは中止である。たとえ自分の土地から出てきた湧き水100%の市民プールも市民感情に配慮して閉鎖である。

 

 とはいえ毎年やることなのだからいつかはプールに入れるだろうと思っていたら入れなかった残念な人間もいる。私である。とはいえ小中の9年間はプールに入れたし、別に泳げないわけでもないから特段実用上困るわけではないが、肝心の高校三年間において、母校のプールで泳げなかったし、貴重な同級生のスクール水着を拝むこともできなかった。出来たのはプールから上がってきて髪が濡れている同級生の姿を横目に見る程度であった。

 

 事情はこうである。まず、高校1年、ふつうであれば男子が水泳の授業を行う予定であった。そこへ水不足が襲来し、水泳の授業は鉄棒で代替されることとなった。残念。うどんばかり茹でている水があるならプールに注げ。うどんは血で茹でろ。……。そして何より、私は鉄棒が苦手であった(という思い込みがあった)。小学校の頃は逆上がりすらできなかったのに今日び高校に入ってから鉄棒をやらされるとは思わなんだ。各種目に点数がつけられ、一定の点数をクリアしないと居残りであった。プールに入れない悔しさをバネに取り組んだところ、できない(という思い込みがあった)はずの逆上がりもラクにできてしまい、あっさり所望の点数を得て鉄棒は終わりとなった。とはいえプールに入れないのはクソである。ファッキュー日照り。ファッキュー取水制限

 

 次いで高校2年。こんどは女子が水泳の授業を行う年であった。ふつうに実施され、水泳の授業後に髪が濡れた状態で教室に帰ってくる同級生の貴重な姿を見ることが出来て大変興奮した。だって考えてもみてほしい。高校2年生の段階で、同い年の女の子の髪が濡れているシーンを目にすることが他にあるだろうか。ラブホとか言ったやつは死刑。後でしっかり殺す。そして、ラブホでシャワーを浴びても身体を流す程度で髪まで濡らしたら大変だろうというマジレス野郎もしっかり殺す。絶対にだ。もう許さんぞ。

 

 ラストチャンスは高校3年。なんと水泳・バレーボール・ソフトボール等好きな種目を選んで男女混合だという。悪い友人2人を抱き込んで水泳を希望した。当然の行動である。このままでは母校のプールを使わぬまま卒業して世間に出てスクール水着フェチになってしまうではないか。ここで危険の芽を摘んでおかないと危機管理がなっていない。そうしてめでたくスクール水着の同級生とプールで泳ぐことが出来ました……と無事に終わったら良かったしみんな救われていたのだろう。けれど、現実はそう行かなかった。みんなが幸せになるなんて土台無理な話なんだ。最後に残った道しるべは儚く消え去った。そう、理系クラスの水泳希望者は全部で3人、私と抱き込んだ悪い友人2名のみであった。なんということだ。ロビー活動が不足していたのか。悲惨な洞爺丸事故・紫雲丸事故の悲しみを再び起こさぬよう水泳の大切さを説いて回るべきであった。あいさつ運動などとやるきのないタスキを掛けて突っ立っているくらいなら手製の水泳啓発チラシを配るべきではなかったか。なぜベストを尽くさなかったのか。人生後悔先に立たず。不肖笹松、根回しの重要さを辛酸をぺろぺろして知ることとなった。

 

 

 そんなこんなで悲しいことに現役女子高生のスクール水着姿を拝めぬまま高校、大学を卒業して社会に輩出され、荒波に揉まれ、就職し、退職し、いまふたたび人生の方向性すら見失いつつある。やはりあの日あの時の幻を、スクール水着の幻影を追いかけてしまうのは偶然ではなく必然であろう。

 

 別にこれらの事情をすべて理解をしてくれと言うつもりは毛頭なく、ただ、私のために、私のわがままのために、スクール水着を着ては頂けないだろうか、というささやかなお願いを聞いてくれる美人を常に募集しています。できる範囲で構いません。どうぞ、ご連絡をお待ち申し上げております。

 

 生きるのがつらい。

0858

 名探偵コナンで蟹、と言ってピンとくる人はよほどのファンであろう。青山剛昌も大喜びだ。刑事さんが鳥取のおばあちゃんに「松葉ガニ食いたかったなあ」とかなんとか言ってたか言わないかのタイミングで携帯電話をプッシュ。普通ならおばあちゃんちの番号は電話帳に入っているだろうという無粋なツッコミはやめ、プッシュホンの各ボタンに割り当てられた音階が鳴るところでコナンがはたと気づくシーン。0858の音階が「七つの子」の「♪かーらあーす」の部分と近いことに気づき、黒の組織がボスへ連絡を取る際も似たようなプッシュ音がすることを思い出すのだ。ではなぜ0858かと言うと……。ここから先は読者各位に青山剛昌の出身地がどこか調べていただいたりしたい。

 

 さて、0858から始まる番号といえば何度か電話をする機会があった。たまたま電話をかけた先の電話機が特定のメーカーなのだろう、特徴的な保留音が流れるのですっかり覚えてしまった。メロディはわかるが曲名は分からない、そんなときはスマホアプリの「Sound Hound」に鼻歌を聞かせてやると良い。いい精度で曲名を返してくれるだろう。

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SoundHound音楽検索認識&無料プレイヤー

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 「♪てれてんてんてんてんてーてんて ててててて」と鼻歌を聞かせてやると、Sound Houndは「テキサスの黄色いバラ」ですよと言う。電話機の保留音というのは太古の昔からメロディIC由来のものが多いと思うが、「テキサスの黄色いバラ」が入っているメロディICはどこのメーカーのものだろうか。市販されている電子機器で、電子音の「テキサスの黄色いバラ」が入っているものは、検索した限りだとパトライト社のメロディ付きパトランプしか見つからなかった。工場のライン等で材料が切れると点灯し、回転し、メロディが鳴るアレである。「静かな湖畔」「草競馬」等の電子音が鳴るやつも多い。

 

 とはいえ昨今は機器類に小さいコンピュータを内蔵し、カスタムされたLinux等を動かして、かつてマイコン等が動作していた部分を置き換えることが多いようだ。そうすればカスタムされたメロディICを用いずとも、コンピュータにmp3なりwaveファイルなりを読み込ませて音声出力すれば良い。そんなこんなでメロディICは徐々に衰退していくのではないかと思うけれど、杞憂でしょうかねえ……。

 

 鼻歌聞かせて曲名教えてくれるアプリなんかよりもおっぱい吸えるアプリを知りてえんだよな。

本棚をつくる(3)

 前回の続きです。

sasamatsu.hatenablog.jp

 盛ったパテが乾いたので、

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 サンドペーパーを端材に両面テープで貼って

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 削りました。

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 パテのパッケージに書いてある説明では、120番~240番が良いよ、ということでしたが、実際には120番だと目が詰まって大変でした。盛りすぎたか、乾いてなかったか、ヤスリがけの力が強すぎたか……。これから更に120番、240番で磨いて、塗装をしていきます。

 

次の回

sasamatsu.hatenablog.jp

とうじんぼう

 305号線をクルマは海へとひた走る。行き先は越前海岸・東尋坊。俗に言う自殺の名所であるが、実体はこんぴらさんの参道を100メートルほど移植したような観光地である。押し寄せる日本海の荒波。昼ドラで最愛の人物を殺めてしまった犯人が飛び込もうとすると、船越英一郎演じる刑事が止めに入り、罪の告白が始まる……。そんなシーンが思い浮かぶような名勝地である。……あくまで、昼間は、であるが。さて、305号線を走るこのクルマ。時刻は真夜中・ウシミツアワー。東尋坊到着時刻は午前2時である。なぜこんな時刻に国道305号線を爆走しているのかは秘密であるが、おおよそ碌でもない野暮用であろう。有料駐車場とはいえゲートに当然人影はなく、入り口にロープも張られていないのでそのままクルマを止める。

 

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 前述のように、昼間は賑やかなお土産屋が開き、観光客が観光バスで乗り付けるような活況が思い浮かぶが、時刻は午前2時である。海岸へ歩をすすめると犬に吠えられる。ガラス戸のむこうに番犬と思しき姿が見える。こんなところへ来てまで眠っていない生き物に存在を認知されるとはなんなのだろうか。よもや、よくある自殺志願者と間違われているのではなかろうか。この犬っころめ。犬のくせに生意気である。

 

 さらに進むと喫茶店のようなお店があり、なんと扉が開いているではないか。よくよく見てみると人の気配もある。こんな時間にも人の気配をさせておくことで自殺志願者を引き留めようという試みだろうか。とはいえ丑三つ時である。さっさと用事を済ませて立ち去ることとしよう。

 

 さりとて岩場は完全な暗闇であった。足を踏み外せばその瞬間に天国のおじいちゃんおばあちゃんとご対面である。ヘルメットに懐中電灯がついているような山岳用の装備が要るような場面である。なぜ昼ドラで晴れの日の昼間にしかやらないかよくわかる。こんな真っ暗闇で撮影したら役者さんが奈落の底へおっこっちまう。舞台の奈落ならケガで済みそうだが(それでも大事故だ)、ここでは命のやりとりをすることとなるだろう。携帯電話に懐中電灯機能がついていてよかったと心底思いつつ慎重に慎重に海辺へと近づく。

 

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 用事はすぐに済んだのでクルマへ引き返す。何もこんなところまでわざわざガソリンを燃やした上に命まで燃やすつもりはないのである。カーナビアプリに次の目的地をセットして走り出す。……どうも進む方向がおかしいような気がするが、左折表示まであと2キロかとそのまま進める。15分ほど走っただろうか。沈黙したカーナビアプリを訝しみ、クルマを止めて画面をつつく。……。なんということだ、スマホがフリーズしているではないか。あわててアプリをすべて落として再起動する。どうやら目的地とは真逆の方向に15キロほど進んでしまったようだ。カーナビに従って来た道を引き返す。

 

 途中、交差点で曲がるべくブレーキを踏むと、ペダルの挙動がおかしく、異常に振動し始めた。クルマ全体に軽く衝撃が走ったような気もする。なにか小動物かなにかと接触したのだろうか。クルマを止めて確認するが、特にぶつかった跡も見当たらない。なんとも不気味な思いだ。固まるスマホ。何かがぶつかったような挙動。単にボログルマと安スマホのせいだと片付ければそれで済むが、どこかこの世の理屈では説明できないような不気味さを感じるドライブとなった。

 

 深夜に長距離ドライブするとクルマが少なくて快適だけどオービス見てヒヤっとしたりラブホ見てしょんぼりしたりするよねっていう話でした。

 

 俺だって愛液まみれのぱんつしゃぶりてえよ。